ホンダは電気自動車に本気なのか? 最新技術を体験して考えた
賢さ(Wise)に通じる知能化の点では、キーを持たずに近づくと顔認証でドアを自動的に開けてくれたり、荷物を持っていればトランクリッドを先に自動で開けてくれたりといった機能が紹介された。ほかにも、自宅にいる知人と出先のドライブ体験を共有できる通信技術も搭載しているという。 自動運転関連では、「レジェンド」で世界に先駆けて自動運転レベル3の運転支援技術を市販した経験を基に、「ハンズフリー」(ハンドルから手を放す)に加え、視線を前方から横へ逸らしても安全に走行し続ける「アイズ・オフ」機能の導入も目指しているという。 こうした知能化には、歩行型ロボットである「アシモ」の知見を活用しているとのことだった。 1980年代の米国のTVドラマ『ナイトライダー』には、人工知能「KITT」(キット)を搭載したクルマが主人公の相棒として登場した。このクルマのように、運転すること自体も楽しめて自動運転もできる「未来のクルマ」に、0シリーズは近づこうとしているようだ。 今回の取材を通じて思ったのは、ホンダがEVに本気だということ。クルマを賢くする先端デジタル技術からEVを効率よく生産するための製造技術に至るまで、幅広い技術について話を聞いてみて、同社が0シリーズの開発から量産までの広範囲にわたり多くのリソース(資材)を投入していることが実感できたからだ。 ホンダの0シリーズは単に、EV専用車として独創的であったり優れていたりするだけでなく、21世紀のクルマに期待される新たな価値の創造へ向かっていることを実感した。 EV販売が踊り場であるかどうかといった目先の議論ではなく、21世紀にどんなクルマが私たちを快適に、そして楽しませてくれるのか、ホンダは真剣に考えているのだとわかった。 ■ 御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。
御堀直嗣