常田大希率いる新生MILLENNIUM PARADEの新機軸 グローバル展開でなぜ“4つ打ち”に活路を見出した?
ジャンルによるラベリングができないMILLENNIUM PARADEの音楽
「M4D LUV」は「GOLDENWEEK」と比較すると、よりオーセンティックなダンスミュージックである。1:00からキックが始まるが、4小節(約8秒)ごとに様々な音のパーツが足されてゆく。これはミニマル(ハード)テクノなんかではよく見られる手法で、「M4D LUV」ではシンセベースや声ネタが8秒間隔で追加される。下の曲は8小節(約15秒)ごとだが、音の足され方がよく分かる例だ。 テクノでは大体7トラックぐらいの音を足し引きしながら展開を作ってゆく。サウンドの組み合わせや音圧でフロアの熱狂を生み出してゆくのがこのジャンルの特長だが、常田はそこからさらにカオスを創造する。ジャングルテラーばりの声ネタを合図に、盤上をひっくり返すがごとくさまざまなサウンドが前面に出てくるのだ。そのうえリズムまで変わり、複雑なビートがさらなる混沌を生んでゆく。 そしてMVでは、「KONG TONG TOKYO(混沌東京)」を舞台に、マスコット的存在の「鬼天使」と共に登場するキャラクターたちがパラパラダンスに興じている。世代によってイメージが異なるかもしれないが、“パラパラ”と聞いて結び付けられる音楽は往々にしてユーロビートなのではないだろうか。そこにかかる等号も、MILLENNIUM PARADEは分解・再構築してゆく。 再びCharli xcxを引き合いに出すが、「Club classics」は具体的に「これは○○です」とは言っていない。つまり、ハウスなのかテクノなのか、はたまたガラージなのか、ジャンルとしてラベリングされていないのだ。特定不能(受け手が恣意的に当てはめることはできるとしても)で異質なニュアンスは、MILLENNIUM PARADEの一連のダンスミュージックからも感じられる。 踊れる音楽と向き合った常田が辿り着いた境地は、まさに混沌東京のサウンドトラックのような趣がある。そこにはフロアの熱狂と、進歩的なものづくりに精を出す作家の情熱の両方が感じられよう。
Yuki Kawasaki