3月にも日銀がYCC撤廃と国債買い入れ額目標再導入との観測:量的引き締め開始までの時限措置
日本銀行が国債買い入れ額に新たな目標設定との観測
時事通信社は3月8日に、日本銀行が早ければ3月18、19日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策解除と同時に10年国債利回りを0%程度にコントロールするイールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃することを検討していると報じた。 さらに、YCCの撤廃とともに、先行きの国債買い入れ規模をあらかじめ示す、新たな「量的」金融政策の枠組みの導入を検討している、としている。買い入れ額は当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する、という。実際に、日本銀行が、こうした枠組みを検討している可能性はあるだろう。 YCCのもとでは、長期国債利回りの安定を維持するために、日本銀行が国債の大量買入れを強いられ、それが日本銀行のバランスシートを肥大させ、また国債の市場機能を低下させる、あるいは円安を加速させ、物価上昇圧力を高めるといった構造的な問題点があることが、2022年に広く認識された。 そこで、植田総裁体制の下での日本銀行は、異例の金融緩和の枠組みの中でもこのYCCが最も問題が大きいとの認識の下、2023年には2回にわたるYCCの運営の柔軟化措置を通じて、YCCの形骸化を相当進めた。
正常化過程での長期国債利回りの安定確保が狙い
筆者は、マイナス金利政策解除後の長期国債利回りの安定を確認したうえで、今年後半などにYCCを撤廃すると予想しているが、YCCの撤廃とともに、国債買い入れ額の目標を設定することで長期国債利回りの安定確保を目指す、このような枠組みを導入するという選択肢もあるだろう。実際、日本銀行は、YCCの撤廃は国債買い入れの見直しとセットで考える、といった趣旨の説明を先般していた。 この枠組みは、長期国債利回りが顕著に上昇する際に、国債の買い入れ目標を引き上げることなどを通じてそれをけん制し、YCCの撤廃後、そして短期金利を引き上げていく過程でも長期国債利回りの安定を維持することを狙うものと言える。また、マイナス金利政策解除、YCCの撤廃と同時にこうした枠組みを示すことで、長期国債利回りの上昇リスクを予め減じる狙いもあるのではないか。