「耐えられないほど寒い。でもここしかなかった」地震後、ビニールハウス暮らしの高齢者約10人 避難所へ行かない「事情」 力を合わせて4人救助
寒さ対策として、居住空間と荷物置き場をブルーシートで分け、熱を逃がさないようにした。地面の上に、野菜の苗を入れるためのプラスチック製のトレーを敷き、その上に段ボール。さらに、持ち寄った布団やカーペットを敷き、下からの冷気が直接顔などに当たらないようにした。帽子をかぶり、ダウンジャケットを着たまま、夜は布団に潜り込む。 それでも、朝晩は底冷えがする。的場正美さん(77)は白い息を吐きながら話す。「使い捨てカイロを全身に貼って寝る。これ以上は防寒方法が思いつかない」 ▽「無理やり元気にやるしか…」 1月8日ごろまでは停電で、持ち込んだ電気カーペットや、こたつは使えなかった。帰省していた子や孫は自宅に戻り、親戚などの家を頼って避難する人もいた。 それでも、集落の結束は固かった。日中はストーブを囲んで暖を取り、みんなで料理を作る。ガスこんろを使った汁物の食事は冷えた体を温めてくれる。木戸さんは「温かい食事を取ることが大切」と話す。
「さあ、今日も頑張っていこう」。朝、起きると誰からともなく、声をかけ合う。「先は見通せないが、もう無理やり元気にやるしか仕方がない」 起床後、協力して近くの川から水をくむのが日課になった。トイレは、かろうじて倒壊を免れた家で用を足しているが、断水のため流すのに水が必要だ。素手で近くの川の水をバケツにくみ、ペットボトルに移す。雪解け混じりの水は震えるほど冷たい。 ▽「こちらの方が気楽」 こんなにきつい生活をなぜ続けるのか、なぜビニールハウスを出て避難所に移らないのか。疑問に思って聞くと、干場さんは理由をいくつも挙げた。 (1)これだけの災害だから、避難所はいっぱいになると予想した (2)コロナや感染症が心配だし、どろぼうの心配もある (3)自宅近くであれば必要なものを取りに行ける。私もキャッシュカードを見つけた (4)地域で団結すれば乗り越えられると思った。みんなで困難を乗り越えようという気持ちが強かった