左から、監督の今泉力哉さんと脚本の今泉かおりさん／撮影：岡本英理

　2016年から2020年にかけて連載され、大きな反響と議論を巻き起こした漫画『1122(いいふうふ)』が、PrimeVideoにて全7話でドラマ化された。主人公は、ウェブデザイナーの相原一子(いちこ/演:高畑充希)と文具メーカー勤務の夫・二也(おとや/演:岡田将生)の夫婦。仲はいいが、悩みの種はセックスレスであること。そこで夫婦円満を保つため、一子は二也に「婚外恋愛許可制」を敷いている。毎月第3木曜日の夜、夫が“恋人”と過ごすのを許しているのだ。 【漫画を読む】ドラマの原作『1122』1巻の1話&2話を無料公開中！ 　二也の“恋人”は、生け花教室で知り合った専業主婦の美月(演:西野七瀬)。仕事一辺倒で家庭を顧みない夫の志朗(演:高良健吾)との関係は冷え込んでおり、息子は療育児。日々の生活で疲弊する美月にとって、二也はかけがえのない存在となっていた。2組の夫婦、万事WIN-WINかと思いきや……。 　セックスレス、不倫、モラハラ、姑の過干渉、不妊治療――。現代の夫婦が抱える諸問題が詰まった問題作を映像化したのは、『愛がなんだ』(19)『街の上で』(21)『窓辺にて』(22)『からかい上手の高木さん』(24)などで知られる今泉力哉監督。脚本は『聴こえてる、ふりをしただけ』(12)などで知られる今泉かおり。このふたりも夫婦だ。 前編となる本記事では、夫婦タッグで制作に至った経緯や、原作を映像化するにあたり、ふたりが重きをおいたことについて語ってもらった。

夫婦で「監督×脚本」初タッグ

『1122 いいふうふ』より

　――原作を読んだ感想は。 　今泉力哉(以下、力哉):お話をいただいたときに原作はもう完結していたので、一気に全部読みました。僕は原作を面白がれなかったら監督はお受けしないんですが、とても面白くて。不倫や浮気って「良くない、ダメ」で終わりじゃなくて、その中に葛藤や罪悪感といった複雑な感情があるじゃないですか。不倫や浮気は過去の監督作でも扱ってきたんですが、『1122』は今まで以上にそれらをしっかり描けるんじゃないかと思いました。 　今泉かおり(以下、かおり):同感です。一子(以下、いちこ)と二也(以下、おとやん)は、夫婦が一緒にいることを諦めないために、不器用ながらも色々なことにチャレンジしていきます。その様子がすごく面白いと思いました。 　――今回、ご夫婦で初タッグです。 　力哉:監督することが決まり、プロデューサーと「脚本家はどうしましょう」となったとき、僕から妻の名前を出しました。妻は僕がまだ仕事で食べられない時期、看護師として生活を支えてくれていたんですが、『聴こえてる、ふりをしただけ』などの作品で監督経験も脚本経験もありますから。 　かおり:ただ、その時点で10年以上、映像の世界からは離れていました。 　力哉:家のことや育児に専念してくれていたんです。僕はいつか妻には映像の世界に戻ってほしいと思っていたので。夫婦ものを夫婦でやって話題になれば、くらいのテンションでした(笑)。 　かおり:まずはお試しでプロット(脚本の前に全体の構成や流れをまとめたもの)を書いてみて、それでOKが出たら脚本もお願いします、という流れでした。プロットでOKが出たので、脚本も書くことになりました。プロセスとしては私が第一稿を書き、それを夫に読んでもらって意見をもらい、微調整して仕上げるという感じです。 　――今まで今泉力哉監督の作品で脚本家さんが別にいる場合、監督が「共同脚本」としてクレジットされていることが多いですが、今回は入っていません。かおりさん単独クレジットですね。 　力哉:実は見え方が違うだけで、今までと一緒なんですよ。まず脚本家さんに全部書いてもらって、そこに僕がちょっと手を入れる。手を入れていいという方としか組まないんですが、僕が直したものが絶対というわけでもありません。脚本家さんと僕との間で何ターンかやり取りして、完成稿を作り上げていくんです。 　そこで共同脚本として僕の名前を入れるのは、「僕が書いたことで面白くなったから、入れてくれ」って言いたいわけではなくて(笑)。むしろ逆です。できあがった作品のセリフ部分がもし誰かから非難された場合に、脚本家さんが「このセリフを書いたのは私じゃない」って主張できるようにしているんです。“逆の責任”を負っている、というか。 もちろん、脚本家さんの側から「監督の名前は入れなくて大丈夫」と言ってくれれば入れないです。ちなみに、僕の名前がクレジットされたからと言って僕に脚本料の一部が入るわけではありません。それは基本的にいただかないです、と伝えています。 　今回は夫婦でやっていますし、僕の名前を入れる意味もあまりないので、入れませんでした。僕がセリフを変えたり足したりしたところも、ほとんどなかったですし。