「妻に映像の世界に戻ってほしかった」今泉力哉監督が妻・今泉かおりと『1122 いいふうふ』でタッグを組んだ理由
子育てを経験したからこそ出てきた発想
――漫画原作を実写ドラマ化するにあたり、何に留意して脚本を書かれましたか。 かおり:原作を読んで私が面白いと思った部分は、特に大事にしようと。また、原作に対する口コミを読んで「ここが面白いって思われてるんだな」と感じた部分も、ドラマになったときちゃんと伝わるように気をつけました。 ――かおりさんが「面白い」と思った部分とは。 かおり:美月がおとやんに、自分と息子と3人で一緒に暮らさないかと言ったとき、おとやんが自分にそんな覚悟はないという本心に気づくくだりですね。「俺 コレ クズなのでは?」というモノローグがありますが、あれは結構……(笑)。ここだけ見ると、おとやんは最低の人間ですけど、私、そういうのが結構好きなんですよ。すごく人間くさいじゃないですか。 ――力哉さんとかおりさんの間にはお子さんがいて、かおりさんは育児に専念していた期間もあったとのことですが、そういった経験があるか、ないかによって、書き上がる脚本は変わってくると思いますか? かおり:子育てという点では、美月と志朗の悩みにすごく共感できました。特に志朗は、原作の前半では育児を美月に押し付けていて、かなり冷たい人間に見えます。ここまで家族に冷たくする理由をわかりやすく提示したいと思い、ひろの発達の遅れに悩んでいて、現実から逃げてしまっている、という設定を付け加えました。これは自分が子育てを経験していたからこそ出てきた発想だと思います。 力哉:だから、志朗が冷たい人間に見えすぎないような脚本を作ってもらいました。本屋の場面など、ちゃんと悩んでいるシーンを追加することで、志朗の葛藤や変化を見えやすくしました。 かおり:そうしたほうが、より視聴者に共感してもらえるかなと。 ――原作からの細かな変更はありますが、全体的には原作にとても忠実な脚本だと感じました。 かおり:原作の渡辺ペコさんは、登場人物の中でも特にいちこに対してはすごくこだわりがあると思ったので、彼女のセリフはできるだけ変えないようにしました。ただ、原作にあったいちこの心の声の具現化(インナーいちこ)はなくしました。実写だと、ないほうが現実味のあるドラマとして面白くなると思って。