元ストリーマー・夢野あかり&初の研究生組・紡木こかげ 『RAGE VALORANT』に挑むぶいすぽっ!メンバーたちを掘り下げる
現在のVTuberシーンにおいて、タレントの活躍する分野は日々拡がっている。そのなかで年々支持を強めているのがBrave groupが手がけるVirtual eSports Project「ぶいすぽっ!」である。 【画像】「濃い目のあかりん」から「夢野あかり」に進化したシーン 業界においてさまざまな趣向のプロジェクトが存在するなかで、「ぶいすぽっ!」が特色としているのは、eスポーツに特化した事務所であること。とくにFPSジャンルを得意とするメンバーが多く、なかには各タイトルにおける認定ランクで上位に食い込む者もいるほどだ。 現在所属するメンバー20人は昼夜問わずゲーム配信をおこない、プロジェクト内外で催される大型大会や企画へ参加するなど、ここ数年ですこしずつ存在感を示してきた。配信を通じて印象的なシーンを生み出してきたことで、コラボ商品や商品広告にも起用されるようになっており、持ちうるタレントをフルに活かして活躍する場面が増えてきている。 現在の運営体制となってから約4年ほど、シーンをリードする「ホロライブ」「にじさんじ」にも劣らない「ぶいすぽっ!」の魅力が、広く知られつつあるのだ。 そんななか、2024年4月29日にはぴあアリーナMMにて『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』の開催が決定している。ぶいすぽっ!の所属メンバーから6人が選抜され、ストリーマーチーム、VALORANTキャスターチーム、元プロチームの3チームへと挑む内容となっている。 当イベントに合わせ、本コラムでは出場するメンバー6人にフォーカスし、彼女らの経歴や活動内容について紹介していこうと思う。今回は『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』においてチームリーダーを務める夢野あかりと、2024年3月19日にデビューしたばかりの新人・紡木こかげの2人についてだ。 ■チームリーダーを務めるのは『VALORANT』上位帯を維持しつづける猛者・夢野あかり ぶいすぽっ!といえば、すこし前に初期メンバーである花芽すみれ・なずな姉妹について書かせてもらったが、オーディション/研修制度を経てのデビューや、すでに活動していたストリーマー/VTuberの途中加入など、さまざまな形を経てメンバーが増えてきた。 大会においてチームリーダーを務める夢野(ゆめの)あかりは、ぶいすぽっ!に途中加入したメンバーの一人であり、数年ほど前からFPS系のストリーマーとして存在感を発揮していた。 加入以前までは「濃いめのあかりん」の名義で活動しており、2020年9月18日にSNSに初投稿、その後Twitchを主戦場にして配信活動をスタートさせていった。活動開始当初は『Apex Legends』を中心にプレイしていたが、徐々に『VALORANT』をメインにプレイするようになっていった。 活動をスタートした初期から、ぶいすぽっ!メンバーとして加入して活動している現在に至るまで、『VALORANT』を配信でプレイする際は主にソロでプレイしており、コンペティティブ(ランクマッチ)をほとんどソロで挑んできた。 本格的にプレイしはじめて2年弱ほど、ぶいすぽっ!加入以前の時点でイモータル(ゲーム内で2番目に高いランク・上位1~2%レベル)へと達し、なかでもイモータルランクとして最上位にあたるイモータル3へと到達したのだ。 しかも彼女はイモータルランクとしてすこしの時間だけプレイしていたわけではなく、初到達して以来数年にわたってランクインしつづけている。これより上位のランクはプロ選手がしのぎを削っているレディアントランクしかなく、プロ選手にもイモータルランクで戦っている選手が何人もいることを思えば、夢野あかりの実力がいかに高いレベルにあるのかが分かってもらえるだろう。 『VALORANT』はプレイヤー5対5のチームで戦うタクティカルシューターであり、爆弾を設置する側と、それを阻止・解除する側に分かれることから、俗に「爆破系FPS」ともいわれる形式のゲームだ。こうした形式のゲームでは、フレンド5人が集まって『Discord』などを使用して連携を取ったチームが、戦術やコミュニケーションの取りやすさの点で有利になりやすい。 もちろんゲーム内ボイスチャットを使うことも可能だが、日本人以外の外国人プレイヤーとチームを組むこともあるので、ソロでランクマッチをプレイするのは言語・コミュニケーション的に不利を負いやすい。 そういった環境であることは当然理解しつつも、活動初期から現在にかけて夢野あかりは一貫してソロでのプレイを中心にしてきた。配信者が陥りがちな「配信を始めてなかなか友達が増えない」状態ともいえるが、一種の“こだわり”“頑固さ”が感じられる部分でもある。 「自分が配信していないときは、プロの配信をずっと見ていた。TENNNさん、ajaさん、Lazさん、善悪菌さん、Sinatraa、Jingg、f0rsakenとかね。プロ選手の動画を見返せば、あたしのIDがコメントにあったと思う」 始めた当初、まだまだ『VALORANT』についての知識や経験が浅かった夢野あかり。そんな彼女に寄り添ってコーチングしたのが、当時ストリーマーとして活躍し始めていたMOTHER3だった。2021年に配信活動をスタートし、同じく『VALORANT』を主にプレイしていた彼とともに配信をともにすることが増え、2人への注目が集まるようになったのだ。 現在でも夢野とMOTHER3の仲は非常に良く、昨年開催された『VTuber最協決定戦 Ver.VALORANT Act.1』に夢野がリーダーとして選ばれると、コーチ役にはもちろんMOTHER3を選び、チームへの指導をお願いしたほどだ。 じつは『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』に出場するストリーマーチームの一員として、MOTHER3は選出されている。師弟対決の結果がどうなるか、この点は注目すべきであろう。 ■猪突猛進で負けず嫌い 実力はもちろん「キャラの濃さ」も魅力な夢野あかり 夢野あかりが人気なのは、その実力だけではなく、パーソナリティにも注目が集まっているからだ。 アニメキャラクターかと思ってしまうほどのハイトーンな声、その声にマッチするような元気で明るい性格で盛り上げてくれる。そんな元気な彼女を見てリスナーからはさまざまなコメントが送られ、配信はいつも活気あるやり取りが交わされている。 夢野は特に大会などで「カッコイイ姿・勝ってる姿を見せたい」とよく口にしており、「自身の活躍する姿をみてポジティブな気持ちになってほしい」という願いが、彼女が活動を続ける原動力になっているともいえそうだ。 こういった言葉から分かるように彼女は真っ直ぐな性格であり、なかやまきんにくんよろしく「ヤー!」と大きな声で気合を入れてプレイしていくことも。配信中・大会企画などで何度も「ヤー!」と言い続けた結果、元ネタであるなかやまきんにくんとケイン・コスギの両名とのコラボに発展したことがあり、本人からも認知されているようだ。 元気いっぱいかつ真っ直ぐな性格の夢野だが、その配信スタイルも“ストロングスタイル”。向上心の塊も高い彼女は、対戦においても満足することはあまりなく、対戦に勝利した瞬間にもかかわらず「なんかちょっと良くなかった、いまの試合」と自身の至らなさを口にするほど。 そうして悔しさが積み上がると、負けず嫌いな性分が顔をのぞかせて配信時間もかなり長くなっていき、10時間や20時間以上、日によっては40時間以上にわたってプレイしつづけることがある。そんな日々を数年にわたって続けてきた配信活動は「ストイック」「禁欲的」とさまざまに言い換えられそうだが、リスナーも心配になるほどに身を捧げていく姿は、まさに「強情な求道者」であろう。 一方で実直すぎる性格が故に、とっさに機転を利かせるのが得意ではないようだ。コラボ相手やリスナーと会話しているとき、またはゲームプレイ中でも、アドリブを効かせたりアイデアがうまく思い浮かばなかったりする場面を配信で見ることがある。 真っ直ぐ一直線、それゆえに不器用。素晴らしいプレイを見せたかと思いきや、次の場面では機転が効かずあり得ないような珍プレイもみせてしまう。そのためか、他のストリーマーやVTuberと絡むときはイジられ役に回ることが多い。 最近では対応する術を身に着けつつあるのか、当人や周囲にツッコんだり、逆ギレするシーンも見られるようになってきた。しかし、いじられてテンパってしまう姿は「濃いめのあかりん」のころから彼女を知るファンから見慣れたワンシーンであろう。彼女の場合、「可哀想は可愛い」などとも言われがちだが、そういったコメントをしやすい配信のムードも相まってなかには度を超えて攻撃的な内容のコメントが目につくこともある。 ぶいすぽっ!運営からも心配の声をかけられたと言われているが、女性ストリーマーから女性VTuberへと立場が変わったことにより、今後すこしずつファン層が変化したり、夢野自身の配信スタンスが変化したりすることも十二分にありえる。「いつものノリ」で傷つけるようなことがないよう心がけたいところだ。 2023年6月18日にぶいすぽっ!への加入が発表されると、以前から彼女を知る多くのストリーマーやVTuberらが祝いの言葉を口にした。eスポーツチームにVTuberが加入することは事例としてあるが、ホロライブやにじさんじといったVTuber事務所などではまず見られない動きとして、多くのファンや関係者を驚かせたのだ。 加入から約1年が経過したいま、彼女は大舞台に向けてチームメイトとコーチと一丸となって練習・親睦を深めている最中である。 ところで、練習のなかでふと「夢野あかりは人と会いたがらない」ことが話題になった。以前から配信中にぶいすぽっ!メンバーからご飯に誘われても言葉を濁してきたという彼女、今回の練習期間中にも「メンバーと会わない・会えない」さまざまなエピソードが明らかになった。 これに加えて、ぶいすぽっ!メンバーの名前を間違えてしまう(八雲べにを「やぐも」、紡木こかげを「こむぎ」など)こともあるなど、「じつは夢野あかりはぶいすぽっ!が好きじゃないのでは?」とイジられるようになった。別の配信では、ストリーマーのClutch_Fiやajaが「連絡が中々返ってこなくてフルパに誘いづらいよ!」と夢野に冗談交じりにツッコむシーンもあった。 もちろんだが、夢野あかりがぶいすぽっ!メンバーを知らないわけがなく、人付き合いに苦手意識があるとしても、分け隔てなく関わりを持とうとするスタンスなのは、彼女の配信を見ていればよく伝わるところだ。 濃いめのあかりんから夢野あかりへ、ストリーマーからVTuber~バーチャルタレントへと立ち位置を変え、大きな変化の時期を迎えている彼女。リーダーとして迎える卯月の大舞台において努力の花は開くのか、注目すべきだろう。 そんな夢野あかりに続いて紹介するのが、ぶいすぽっ!で初となる研究生からのデビューを果たした紡木こかげだ。