北九州地盤「資さんうどん」は関東でどこまで戦えるか メニューは100種類以上 「丸亀製麺」「はなまるうどん」との違いも分析
多角化が大きなカギか
ここからは、すかいらーくHDが資さんを買収した理由を見ていこう。業績推移を見ると、すかいらーくHDはここ数年、苦戦していることが分かる。2019年12月期から2023年12月期の業績は次の通りだ。 売上収益:3753億円→2884億円→2645億円→3037億円→3548億円 営業利益:205億円→▲230億円→182億円→▲55億円→116億円 グループ総店舗数:3258→3126→3098→3056→2976 コロナ禍の業績悪化から売上収益こそ回復しているが、営業利益の推移は芳しくない。2022年度の赤字は原材料費や光熱費の高騰も影響した。 何より、総店舗数が減少し続けている。10月末時点でガスト1246店舗、バーミヤン362店舗、しゃぶ葉295店舗、ジョナサン163店舗とブランドはある程度分散しているが、そのほとんどがファミレス業態であり、いずれも不採算店の閉店を進めている。 対照的なのが、外食大手のゼンショーHDだ。すき家の他、はま寿司やジョリーパスタ、北米でのテークアウト寿司店など多角化に成功している。既存のファミレス事業が苦戦する中、すかいらーくHDはファストフードに位置付けられるうどん業態に勝機を見出したのではないだろうか。和・洋・中と幅広いジャンルを展開している現状では、新たなファミレス業態を開発したところで勝ち目は薄いとみられる。 すかいらーくHDの傘下となった資さんうどんは今後、2029年までに210店舗まで店舗数を増やす方針だ。新規出店に加え、ガストからの業態転換も進めるという。首都圏では今冬に千葉県八千代市、2025年初頭には東京都・両国で新店をオープンする。前者はロードサイド地域、後者は都市部であり、それぞれの立地で様子見する狙いがあるのだろう。特に両国店は、都内で一気に勢力を伸ばす上での試金石といえる。 現状、うどん業態は丸亀製麺が一強状態だ。資さんうどんは営業利益率が2%という高コスト体質も懸念材料とされており、丸亀製麺の16%と比較するとその差は歴然だ。賃料の高い首都圏で出店するに当たり、メニューの絞り込みが行われる可能性はある。しかしそれは資さんうどんの良さを削ぐことにもつながるため、もろ刃の剣といえる。長所を維持しつつ勢力を拡大できるか、すかいらーくHDの手腕に注目したい。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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