世界で急拡大する「医療画像市場」、インドで新ビリオネアが誕生
X線やCTスキャン、MRIの診断能力を向上させる造影剤を製造するBlue Jet Healthcare(ブルー・ジェット・ヘルスケア)の株価は、過去12カ月間で約1.5倍に上昇した。これを受け、ムンバイに本拠を置く同社のアクシャイ・アローラ会長(61)の保有資産は11億ドル(約1700億円)に達し、インドで最も新しいビリオネアとなった。 世界的な予防医療に対する需要の高まりと高齢化の進展により、医療画像の市場規模は急拡大している。これを受け、ブルー・ジェット・ヘルスケアには投資家から熱い視線が向けられている。 アローラは、2023年10月にブルー・ジェット・ヘルスケアを上場させ、現在も同社の株式の86%を保有している。同社は、年商の3分の2を造影剤から得ている。世界の造影剤市場の規模は59億ドル(約9300億円)で、早期診断のニーズの高まりとともに成長が見込まれている。 ブルー・ジェット・ヘルスケアは、造影剤以外の製品も手掛けている。飲料からサプリメントまで、様々なものに使用される人工甘味料は売上の18%を占め、抗がん剤や心血管疾患、中枢神経系疾患向けの医薬品に使用される医薬中間体は売上の13%以上を占める。 「これらの3つのセグメントの全てが、力強く成長している」とアローラは12月19日に行われた電話インタビューで語った。2021年から2024年にかけて、同社の売上高は年平均12.6%で成長した。9月末に終了した2025年度上半期の売上高は、前年同期比3%増の4200万ドル(約66億2600万円)、利益は5%増の1200万ドル(約18億9300万円)だった。 世界の造影剤市場は、ドイツのバイエルや日本の第一三共などの大手が主要なポジションを占めている。「造影剤は非常にニッチな分野だ。必要とされる化学薬品は、医師がMRIやCTスキャンで正確な場所を特定できるように、正確でなければならない。参入障壁は高く、我々は顧客と複数年契約を結んでいる」と、アローラは言う。 ブルー・ジェット・ヘルスケアは、1968年にアローラの亡父であるバンサリラール・アローラによって設立され、当初は甘味料の製造を手掛けていた。アローラは、ムンバイ大学で有機化学を専攻して理学修士号を取得した後、1983年に取締役として入社した。 彼は2000年に造影剤市場に参入し、その成功によってビリオネアの仲間入りを果たした。同社はその後、医薬中間体の製造にも進出している。 ブルー・ジェット・ヘルスケアは、今後も同族経営を続けることになりそうだ。アローラの息子であるシヴェンは、オーストラリアのボンド大学でビジネスを専攻し、現在は同社でマネージング・ディレクターとして、財務と戦略を担当している。
Anu Raghunathan