【沸騰化時代の処方箋】環境問題解決への近道は“子どもの教育” 暗闇の街が「世界のお手本」になるまで
“地球沸騰化”と言われる時代に生きる知恵。北欧には、気候変動で「暗闇」に包まれた街があります。その街で地球と生きるカギを握っていたのは“子ども”でした。 【動画】世界トップクラスの“環境先進地帯”を取材
暗闇の街が世界トップクラスの“環境先進地帯”に
北欧・フィンランドの北に位置するイー市は、漁業を中心に栄える人口約1万人の街です。夏の避暑地として人気が高い自然豊かな街ですが、冬の間は日が出ない地域。もともと雪明りが欠かせませんでしたが、“地球沸騰化”とも言われる気候変動の影響で、雪の降りはじめが遅くなり、暗い期間が延びています。
気候変動の影響を受けているのは人間の暮らしだけではありません。1800年代から代々トナカイ農家を営んでいるユッシラさんによると、トナカイたちにとっても大きな問題となっているようです。 トナカイ農家 ヤリ ハンヌ ユッシラさん: 「冬の間トナカイたちは食べ物を求めて北へ移動するのですが、(今は)移動させないようにしています。食べ物が取れなくなっているから。雪が氷のように固まってしまい、その下の苔を掘ることができなくなっています」 冬の気温が上がって雪が一度溶け、それが再び氷になることでトナカイが食べ物を取れなくなっているというのです。そのため、冬は放牧はせず柵の中で飼育しているそうです。
“地球沸騰化”が暮らしに直撃しているイー市では、約10年前から火力発電をやめるなどの取り組みを進めました。その結果、ヨーロッパ全体(※EU)の目標より30年も早く炭素の排出量を80%削減。今では世界トップクラスの“環境先進地帯”となったのです。 そんなイー市が今、最も力を入れていることは“子どもへの教育”でした。
大切なのは「子どもたちに“もったいない”を教えていくこと」
イー市内の公立小学校を訪ねると、子どもたちが森の中で楽しそうに虫や木を観察していました。フィンランドの小学校では「環境科学」という授業があるだけではなく、算数の授業で森の中に行き、葉っぱや枝を数えて学ぶこともあるといいます。 この小学校では普段から自然の中で授業することが当たり前。自然と共に生きていくことを幼い頃から体験することで、自然や環境について考え、責任を持つようになると、校長のノウシアイネン先生は考えています。