【今年最大の問題作を先行公開】GSとリーマン 投資ファンドを手玉に取る手口を教えよう…『リーマンの牢獄』が出版前からヤバすぎる理由
2008年9月、アメリカでサブプライムローン(低所得者向けの住宅ローン)が崩壊し、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した。世界金融危機「リーマン・ショック」の直前、リーマン・ブラザーズから総額371億円にのぼる莫大なカネを騙し取った凄腕詐欺師(懲役15年)がいる。 【写真】批判は覚悟している…リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年 5月16日、「リーマン・ショックの引き金を引いた男」の回顧録『リーマンの牢獄』が出版される。2024年最注目の巨弾ノンフィクションに、知られざる現代史の裏側が赤裸々に記録される。(文中敬称略)
ゴールドマン・サックスから引き出した30億円のキャッシュ
山一證券の証券マンだった齋藤栄功(しげのり)は、山一の自主廃業後に都民信用組合やメリルリンチで名を揚げ、小説に出てくる「バブル紳士」さながらのド派手な生活を送る(バブル紳士生活の回顧録については、この連載で追ってご紹介しよう)。 医療経営コンサルタント会社「アスクレピオス」を創業した齋藤は、知能犯としての才覚を存分に発揮してマネーゲームに血道を上げる。丸紅の課長や嘱託社員と一緒に「自分たちの共同事業のバックには丸紅がついている」という架空のストーリーを信じこませ、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズからカネを巻き上げたのだ。 著書『リーマンの牢獄』では、リーマン・ブラザーズから総額371億円を詐取するまでの手法が赤裸々に描かれている。齋藤ら詐欺グループがリーマンより先にターゲットに据えたのは、あのゴールドマン・サックスだった。 〈「06年9月27日ごろ行われたゴールドマンとの初回の顔合わせに、丸紅本社ビル15階の役員フロアの応接室が使われた(略)ゴールドマン側は会計士ほか2人のスタッフが来ていました。山中氏【※齋藤との共謀者である丸紅の山中譲課長】はまだ現役の課長でしたし、別の課長も同席しています。ただの場所貸しで丸紅が役員応接室を開放すると思いますか? ゴールドマンも丸紅の肩入れを確信したはずです。 それ以降は、丸紅に近い竹橋そばのKKRホテル東京の一室や、六本木ヒルズのゴールドマン本社でも2回ほどミーティングが行われたと記憶していますが、やはり皇居を見下ろす丸紅役員応接室の〈借景〉効果は抜群に効いたはずです」〉(『リーマンの牢獄』242ページ) 丸紅の現役課長らが口裏を合わせ、ゴールドマン・サックスの面々に架空の投資ビジネスを信じこませる作戦が決行された。役員フロアの応接室を打ち合わせ場所に押さえるというハッタリが功を奏したのか、ゴールドマン・サックスは出資にGOサインを出す。 〈――このときゴールドマンが出したのは、一部報道で30億円とされていますが。 「いいえ、確か100億円程度だったと思います。償還期限は3~4ヵ月、110億円以上を返済することになっていたんじゃないかな。年率換算30~40%というハイリターンですから、ゴールドマンにとっては短期で荒稼ぎできるおいしい話でした。〉(『リーマンの牢獄』243ページ) 【※なお『リーマンの牢獄』は、齋藤栄功のアバター(別人格)が齋藤にインタビューしていくQ&A形式で書かれていることを了解されたい】