【今年最大の問題作を先行公開】GSとリーマン 投資ファンドを手玉に取る手口を教えよう…『リーマンの牢獄』が出版前からヤバすぎる理由
A4判の紙ぺら1枚で人は見事に騙される
リーマン・ブラザーズから371億円を詐取する際、リーマン側で窓口となったのは法人営業本部事業法人部部長の實貴(みき)孝夫だ。齋藤栄功はかつてメリルリンチで勤務していた。實貴はリーマンに転職する前にメリルリンチに在籍しており、齋藤とは前の職場で旧知の間柄だった。 〈「實貴氏はなかなか慎重でしたよ。丸紅との折衝でも〈変なところがあったらすぐ帰る〉と息巻いていましたから。合意に至るまでに業務委託契約をはじめとして債権譲渡契約書を精緻に書き直したのはリーマン側です。僕は契約書をプリントアウトし、製本しただけでした。業務委託契約書に捺印した丸紅の印鑑も僕が偽造したわけじゃない。 アスクレピオス【※371億円詐取事件を進めた齋藤の会社】のスキームは、実は投資家として加わった僕の知り合いの投資銀行マンたちが、ことあるごとに知恵を出し合い、自らの手で精緻に作り変えていったものです。被害者がいつのまにか加害者になってしまうポンジ・スキーム【※投資家から出資を集める投資詐欺の手法】になっていたのは、その頂点に丸紅の支払い保証、いわゆる納品請求受領書が鎮座していたからなんです。 この受領書、およそ証券会社や投資銀行の人間が聞いたこともないような、A4判のたった1枚の紙ぺらなんですよ。この紙以外、僕にはどうでもよかったんです」〉(『リーマンの牢獄』251~252ページ) そのまことしやかな紙ぺら1枚によって、天下のリーマン・ブラザーズが見事に手玉に取られてしまったのだ――。 (文中敬称略/「「架空の丸紅部長」に変身した元白バイ隊員 リーマン・ブラザーズはこうして騙された」へ続く)
齋藤 栄功(「リーマンの牢獄」著者)/現代ビジネス編集部