パリ五輪決定!サッカーU23日本代表のキーワード「86分の23」「大岩ファミリー」
◆サッカー男子パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯 準決勝 日本2ー0イラク(29日・ドーハ) 【イラスト】大岩ジャパン、パリ五輪出場決定 注目の本大会組み合わせ 【ドーハ(カタール)29日=後藤亮太】日本が8大会連続12度目の五輪出場を決めた。準決勝でイラクに2―0で勝って大会3位以上の条件をクリア。1996年アトランタ五輪から途切れることなく今夏のパリ本大会(サッカーは7月24日開幕)への出場権を獲得した。前半にFW細谷真大(まお、22)=柏=の先制弾、MF荒木遼太郎(22)=FC東京=の今大会初ゴールで加点。守備では無失点でしのいで予選を突破した。3日(日本時間4日)の決勝でアジアの頂点をかけて、ここまで無敗のウズベキスタンと対戦する。 ドーハのピッチに笑顔の輪が広がった。8大会連続五輪出場が決まると、大岩剛監督(51)はスタッフと肩を組んで喜び、選手23人と固い握手を交わした。日本サッカー界の歴史をつなげる1勝に、指揮官は「素直にホッとしている。選手たちがこの1試合に懸ける思いをピッチの上で示してくれた」。16年リオ五輪最終予選のあった同じ地、同じ準決勝で、同じイラクを2―0で破って切符を手にした。 前半開始からアクセル全開で挑んだ。前半28分にMF藤田主将のパスを受けたFW細谷が右足で2戦連発となる先制点。これで勢いに乗ると、同43分にも再び藤田のアシストからFW荒木の右足で突き放した。イラクより1日休養日が多く、今大会最も遅い午後8時半キックオフは日本有利に働いた。気温29度も日は沈み、体力の消耗度も少なかった。守備陣も3戦ぶりの無失点。大岩監督は「選手がやるべきことを共有して、いい攻撃と守備につながった」とたたえた。 86分の23。開幕前に大岩監督が提示した数字に選手らは重責を再認識し、背筋を伸ばした。発足2年で呼ばれた86人のうち、選ばれた23人だけが立てる最終予選だった。指揮官が「全員で戦う」と掲げた言葉通り、中2日で3試合を戦う1次リーグ(L)では、23人中22人(GK山田大を除く)を先発起用して出場時間を徹底管理。疲労度の高い選手は練習に参加させず、宿舎内での調整に専念させた。大会中の負傷者はゼロだった。 選手の心にも寄り添った。大岩監督の現役当時から取り巻く環境はガラリと変わり、選手がSNSアカウントを所有して発信する時代。応援を直接感じられる反面、誹謗(ひぼう)中傷に直面することもある。それを理解し「今の選手はネガティブなものに左右されてしまうけど、ここ(代表)に来た時だけは、みんなが同じ方向を向いて、一つのものに夢中になれるグループでありたい」。大会前のミーティングでは、各自が言葉で思いを伝える重要性を説いた。 選手たちは自発的に動いた。4月22日の韓国戦(0●1)後に初の選手ミーティングを実施。初戦の中国戦でDF西尾が一発退場となり、1次L3戦でFW陣は不発。批判にさらされたが、副主将DF内野貴は「ここにいる人たちは絶対に仲間」と結束。以前は意見交換の少なさに危機感を覚えたこともあった藤田も「本当にいいチームになった」。イラク戦では出場停止明けの西尾を途中起用。誰もが大岩ジャパンをファミリーと呼ぶようになった。 再び味わったドーハの歓喜だが、五輪切符は最低限の目標だ。MF松木は「目の前のチャンスを生かし、アジア1位で五輪に臨めたらいい」と決意表明。アジア王者として、今夏の本大会で56年ぶりの表彰台、その先の金メダルを思い描く。自信を持って世界と戦う。 ◆16年リオ五輪アジア最終予選のイラク戦 勝てば6大会連続10度目の五輪切符獲得となる準決勝で対戦。前半26分にFW久保裕也のゴールで先制したが、同43分に失点。延長突入目前だった1―1の後半48分にMF原川力が劇的な決勝点を奪った。勢いに乗ったチームは決勝でFW浅野拓磨の2得点などで韓国に3―2で競り勝ち、アジア1位でリオ五輪出場を決めた。
報知新聞社