なぜ大金持ちは幸せそうに見えないのか…精神科医が「人生に期待する人ほど不幸になる」と考える理由
■悩む時間は最小限のほうがいい 「期待しない」の方向性は、三つあります。 「○○してもらえるはず」と、人に期待しない →相手が失礼だったり冷淡だったりしても、ガッカリしないで済みます。 「自分は○○できるはず」と、自分に期待しない →自分を責めたり、「○○しなくては」と焦ったりしなくて済みます。 「○○によってうまくいく」と、結果に期待しない →良い結果にならなくても、落胆せずに済みます。 結果、悩む時間を最小化できるのです。「何もかもあきらめろということ?」と思ったかもしれませんが、どうか誤解しないでください。決して「悲観的になれ」と言っているのではありません。 悲観的な態度とは、「しょせん他人は冷たい」「どうせ失敗する」「何をしてもうまくいくことはない」と、投げやりになることです。これはむしろ、期待が強すぎる状態です。 期待が強ければ強いほど、アテが外れたときの傷も深くなります。その反動で「どうせ……」と心を閉じるのが、悲観モードです。 ■今から実践できる「期待しない」練習方法 そうではなく、身につけるべきは、悲観でも楽観でもなく、フラットな態度です。「絶対にうまくいくはず」でもなく、「うまくいくはずない」でもなく、「さて、うまくいくかな?」くらいの気持ちでいると、結果もフラットに受け止められます。 悪い結果に落ち込まず、良い結果に浮かれず、「あ、そうか」「じゃ、次はどうする?」と、未来に目を向けることもできます。心が平穏になるうえに、前向きにもなれるのです。 「全然、できる気がしない」と思うかもしれませんね。たしかに、最初は難しいです。「期待しない」は、自転車と同じです。乗れるようになるには訓練が必要ですし、一定の練習期間がかかります。しかしいつかは必ず乗れるようになりますし、いったん乗れたら、もう乗り方を忘れることはありません。 「期待しない」の練習方法は、いたってシンプルです。何かにガッカリしたとき、「あ、期待してた」と思うだけ。 この気づきを地道に繰り返していると、いつしか要領がつかめてきます。それから、気づいたときに「また期待しちゃった、ダメだな……」と自分を責めないこと。気合を入れる必要もなく、普段はまったく意識しなくて結構です。 何かあって凹んでいる自分に気がついたら「あ、期待してたわ」と一瞬思い、すぐ忘れるのがコツ。このアッサリ感そのものが、「期待→ガッカリ」のクセから抜ける練習にもなっています。急がずのんびり、着実に取り組みましょう。 ---------- 西脇 俊二(にしわき・しゅんじ) 精神科医 弘前大学医学部卒業。2009年よりハタイクリニック院長。2008年より金沢大学 薬学部 非常勤講師、2010年よりEuropean University Viadrina非常勤講師も務める。自身もアスペルガーであり、その苦労を乗り越えた経験を生かした著作も多い。テレビ出演のほか、ドラマ『僕の歩く道』『相棒』『グッド・ドクター』、映画『ATARU』等の医療監修でも活躍。 ----------
精神科医 西脇 俊二