「妻がびっくり仰天してました」…山中伸弥が明かす、アイデアを生み出す意外すぎる行動
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第19回 『【山中伸弥×羽生善治】AIも敵わない…「ノーベル賞級の発見」をしたスゴすぎる「思考法」』より続く
「勘」と「進化」の意外な関係性
羽生 脳科学者の池谷裕二先生は、説明できるプレーに関わる勘を「ひらめき」と言って、説明できないプレーに関わる勘を「直感」と呼んでいました。つまり言語化できるかどうかで、使う脳の部位が違うそうです。でも使っている側にしてみれば、どの脳を使っているかはあまり関係ありません(笑)。 山中 それはそうですね。 羽生 生物はカンブリア紀に目の機能を獲得したことで、爆発的に進化を遂げたという説があります。目を獲得したことで行動範囲が広がって知能が上がった。人工知能が専門の東大の松尾豊先生によると、AIも画像認識技術が向上したことによって視覚情報が扱えるようになり、その可能性が一気に広がるはずだと推測しています。 そこで面白かったのは、生物は目を進化させるために、他の器官はあえて鈍くしているということでした。だから勘というのは、その進化の過程で鈍らせてきた機能をもう一度、活性化するようなものではないか、とおっしゃっていました。
アイデアを生み出す驚きの習慣
羽生 アイデアや発想、ひらめきを得るときには、ものすごく考えて考えてそこから生み出されるものもあれば、あるいはちょっと空白というか、熟考から離れてぼんやりとしているときにパッと思いつくこともありますね。眠っていたものが突然、目覚めるように。それは鈍らせていた機能が活性化された瞬間かもしれません。 ということは、ひらめきを得るためには、インプットばかりではなく、それを整理したり無駄なものをそぎ落としたりする時間が必要なのかな、とは思っています。 山中 そう言えば、アルキメデスじゃないけど、僕も風呂場でアイデアが生まれたことがありますよ。カリフォルニアのグラッドストーン研究所でがんになったマウスの研究をしていた時です。ある遺伝子がなぜがんを引き起こすのか、なかなかいい考えが浮かばずにシャワーを浴びていたんです。そのとき、ふとすばらしいアイデアがひらめいた。シャワーを浴びながら「よし!」と大声で叫んだもんだから、妻がびっくり仰天してました(笑)。 マラソンやランニングをするときも、僕は頭の中を空っぽにしていますね。でも走っているときはしんどいなぁと思っているだけで、とくにすばらしいアイデアが浮かぶわけではありません(笑)。その後のシャワーがチャンスです! 『 日本人には簡単なのに…羽生善治が語る、「最新AIも超えられない」高すぎる「日本語の壁」』 に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治