「自分も共犯者のような感覚に…」 小3から始まった父親からの性的虐待 難しい子どもの“SOS”発信、必要な環境整備は
塚原さんが今発信する背景には、さらにつらい経験がある。「20年ほど絶縁していたが、父親に居場所がばれ、『遺産相続のことで話がしたい』と手紙が来た。怖かったが、しばらくしてから電話をかけた。父親のせいで自殺した弟の名前を告げると、『あの子は死んでも構わないが、たえちゃんが死ぬのは嫌だ』と言われ、『この人はもう許さない』と思った。今私にできるのは、法改正や時効撤廃への働きかけ。弟には毎日『ごめんね』としか言えない。生きているうちに助けてあげたかった」。
■子どもの権利擁護センター「CAC」、米は950箇所以上に対し日本は2箇所 必要な環境整備は
子どもが被害を打ち明けづらい現状を改善しようと生まれたのが、子どもの権利擁護センター(通称CAC)。神奈川県立こども医療センターには、CACが認定した専門の面接官が、警察や児童相談所に代わって聞き取りを行う「面接室」が設けられている。その様子は、各機関の担当者がモニタリングしながら、必要な情報を共有。最小限の相手のみが向き合うことで、子どもの不安を和らげられる。しかし、施設はアメリカが950以上あるのに対して、日本では神奈川のわずか2つだけだ。 また、アメリカでは「系統的全身診察」と呼ばれる手法がとられている。身体のパーツごとに危害歴を聞き取り、性器・肛門も含め全身を診察し、メンタルケアも行う。こうした診察を行うことで、面接で得られなかった情報を汲み取ることにつながる。
子どもの性被害などの課題解決に取り組む「ふらいと先生」こと、小児科医の今西洋介氏は「性加害は身体的虐待と同時に行われることが多い。全身を見ることで、『違う虐待を見つけてくれた』と開示率の上昇につながる。アメリカでは系統系診察が、DNA鑑定と代わるほどになっている」「日本では子ども本人が法廷で『この人から被害を受けた』と発言しないと起訴できない。アメリカでは診察結果や、弁護士が聞く司法面接のデータで起訴できる」と説明する。 一方、塚原さんは「医師を信用できない保護者も増えている。学校の検診で苦情があったというニュースもある」と指摘。「そもそも虐待している親は、まず病院に連れて行かない。私も顔を殴られ、右耳の鼓膜が破れて今も難聴だが、病院へ連れて行かない」とも述べた。