欧州の名門映画祭、相次いでイーロン・マスク運営のXから撤退
ベルリン国際映画祭は12月31日付で、イーロン・マスクが運営するSNS「X(旧Twitter)」からの撤退を発表した。これに先立ちベネチア国際映画祭のアルベルト・バルベーラ芸術監督も同様の決定を下しており、マスクが運営するプラットフォームと欧州の主要文化機関との関係悪化が鮮明になっている。 ベルリン国際映画祭は公式声明で、今後の情報発信をInstagram、Facebook、LinkedIn、YouTubeに集約すると表明。撤退の具体的理由は明らかにしていないものの、「プラットフォームの詳細な監視と評価を実施した結果」として、他のSNSへの注力を決定したという。 先行して撤退を表明したベネチア国際映画祭のバルベーラ芸術監督は、「(マスク氏体制下での)プラットフォームの目的や方向性との価値観の共有がもはや困難」と明言。両映画祭の決定には、マスク氏の政治的立場が大きく影響しているとされる。 マスク氏は2022年末にXを買収して以降、ドナルド・トランプ前米大統領の有力支持者として知られ、プラットフォーム上での右派・極右的コンテンツの拡散を容認してきた。特にドイツでは、反移民政策を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を支持する投稿を頻繁に再投稿するなど、リベラルな価値観を重視する欧州の文化機関との軋轢を深めている。 次回の第75回ベルリン国際映画祭は25年2月13日から23日に開催を予定している。今回のX撤退の決定は、文化芸術界全体における脱X化の潮流を一層加速させる可能性を示唆している。