【台湾】御テイ国際、熊本進出を検討 台湾飲食企業の海外展開(上)
台湾でレストランや結婚式場を運営する御テイ国際(テイ=山かんむりに頂)が熊本への進出を検討している。ファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出に伴う動きで、実現すれば御テイ国際にとって初の日本進出となる。長期的な計画として、台湾の飲食店などを集めた「台湾城(タイワンタウン)」の開設を掲げる。まずは市場の反応を探るため、台湾の飲食業者と共に8月末から9月初めにかけて熊本市でマーケットを開く。【張成慧】 孫正強董事長がNNAの取材に明らかにした。孫氏によると、御テイ国際は熊本のほか、横浜、マレーシアやタイなど東南アジアの国を海外展開の主要市場と位置付けている。うち熊本への進出を検討する理由について、孫氏は観光面で潜在力があるとみている以外に「最も大きなきっかけはTSMCの熊本進出だ。台湾と日本だけではなく、ひいては世界中から注目を集めている」と強調した。 孫氏は長期的な計画として、「熊本に大規模な開発に適した土地があれば『台湾城』または『台湾街(タイワンストリート)』を開設したいと考えている」と説明。「飲食業だけでなく、台湾の文化・クリエーティブ産業や特色あるブランドも誘致したい」と構想を話した。 一方で、台湾城や台湾街の開設は、現地の市場が一定程度成熟するのを待って、初めてチャンスを得られると考えているとも述べた。 孫氏は、初期段階で早期に進出を果たす方法として、商業施設のフロアを賃借する形を挙げた。「適当な場所があれば、路面店の形態となる可能性もある」と話した。 ■ローストダックや飲茶が候補 御テイ国際は台湾で結婚式場の「晶宴会館」と海鮮レストランの「頂鮮台南担仔麺」の両ブランドを展開し、高い知名度を誇る。近年はローストダックを提供するレストラン「晶粤軒コウ鴨餐庁(コウ=火へんに考)」や飲茶の「晶匯点港式飲茶」なども出店している。 孫氏は、熊本での発展が見込める自社のブランドに関して、ローストダックや飲茶を候補に挙げた。「熊本で台湾式の海鮮料理レストランも展開できるが、(熊本の市場は)日常的なグルメをメインにすることを考えている」と説明。将来的には、汁なし麺の乾麺や魯肉飯といった料理も提供する可能性があるとした。 孫氏は昨年末以降、熊本を3回視察。人出などを考慮し、熊本市中心部を進出先の候補とした。TSMCの工場は熊本県菊陽町にあるが、多くの台湾人が熊本市中心部で消費すると見込んでいるためだ。 ただ、「熊本市中心部の既存物件は分散していて、比較的大きな区画を見つけるのが難しい」と話し、「現時点でわれわれの計画に適した区画は見つかっていない」と明かした。 熊本では地価が上昇しており、進出コストが高まっているとも指摘した。 ■熊本でマーケット開催 こうした中、御テイ国際は短期的な目標の実現を目指すことを決定。8月30日~9月1日に熊本市の花畑広場で台湾グルメを集めたマーケット「御テイ台湾祭」を開く。御テイ国際のほか、ベーカリーを手がける「聖保羅企業」などが参加し、20ブースを構える。牛肉麺などの食事や、パイナップルケーキといった台湾特産の土産品などを販売する予定。 御テイ国際は、熊本の市場の台湾飲食ブランドに対する反応を探るほか、イベントを通じて日本の協力相手や代理企業を見つけることも期待している。孫氏は「まずは短期のイベントで反応を見極めた上で、商業施設を探して進出する。市場の可能性がはっきりとした後に、開発に適した場所を探したい」と説明した。 ■東南アジアを有望視 孫氏は海外展開を巡っては、東南アジア市場を「成長潜在力が高い」として有望視していることも明らかにした。 孫氏によると、台湾では婚姻率の低下や少子化が進み、婚礼市場は縮小しているというが、東南アジアは婚姻率が上昇し続けており、「消費と披露宴などの分野で期待することができる」。 孫氏はマレーシア市場について「婚礼サービスをパッケージで打ち出すチャンスがある」とみている。さらに現地は華人が多く、受け入れられる可能性が高いと予測。「われわれには晶宴会館の事業で積み重ねてきた経験と優位性がある」と述べ、ビジネスモデルを持ち込むことができると強調した。