SAPIX講師が“脈々と”受け継ぐ「教えすぎない」の妙 算数の力を上げるために必要な「思考」と「習得」とは?
あたりまえのことですが、テストでは自分の力で問題を解けることがとても大事になります。 もっと言うと、中学受験をしてもしなくても、子どもの問題解決能力を高めていくことは、この先の社会で生きていくうえで非常に重要です。 しかし、あまりにも教えられることに慣れてしまうと、「わからないことは聞けばいいや」「待っていれば教えてくれる」という姿勢が身についてしまいます。 とくに算数という教科では、「教わればわかるけれど、自分で考える(手を動かす)ことは苦手」になってしまいます。
■子どもに「教えて」と言われたら? 教えすぎないことが重要な一方で、子どもに「教えて」と頼まれたのに「自分で考えよう」と断ってしまえば、「もういいや」とあきらめてしまう可能性もあります。 一度心のシャッターが下りてしまうと、そこからまた興味を持ってもらうのは大変なことです。「がんばったらできるかもしれない」という段階まで教えることを目標に、つかず離れず調整しながら接していけるとよいでしょう。 大切なことは、子どもが自分で考えられる余白を残しておくこと。
SAPIXでは「ここまでは教えて、ここからは自分で考えてほしい」という切りわけをしています。 「ここはこういうふうにすればわかるはずだから、1回自分で解いてみよう」とうながします。しかし、その塩梅(あんばい)が算数を教えているプロの先生でもとても難しいのです。まして、ご家庭であればなおのことでしょう。 さらに言うと、どこまでの範囲を教えて、どこからは自分で考えたほうがいいのか、すべての子どもにあてはまる正解はありません。
ただ、どの子どもにおいても思考する機会を奪ってはいけないということは共通しています。 たとえば、算数の問題を解くのに方程式の知識を持ち込んでしまうと、本来は子どもがもう少し試行錯誤して視野を広げたほうがいいタイミングだったとしても、先に効率的に解く方法を習得して思考する余地がなくなってしまいます。 また、大人が教えすぎることで子どもがうんざりしてしまい、勉強への抵抗感を抱く可能性もあります。 「叱られても仕方がない」と子どもが思っていることでも、1時間ずっとお説教をされ続けると誰でも飽き飽きしてしまいますよね。