富士登山鉄道断念でタイヤ走行の「トラム」検討へ 山梨、唐突な提案変更で地元反応に懸念
山梨県の長崎幸太郎知事は18日の定例記者会見で、富士山の麓と5合目を結ぶ自動車道路「富士スバルライン」に軌道を整備して、次世代型路面電車(LRT)で結ぶ「富士山登山鉄道構想」を断念すると発表した。代替としてゴムタイヤのついた車両で走行する新たな交通システム「富士トラム(仮称)」を検討する。スバルラインにマーカーなどを敷設し、それに沿って走るため、スバルラインを道路でなく軌道として扱うことが可能で、来訪者制限が可能となるとしている。 【別画像】山梨県が富士山5合目までのアクセスとして検討する新しい交通システム「富士トラム」のイメージ 登山鉄道構想に対しては地元の富士吉田市などから環境破壊や富士山の尊厳を傷つけること、1400億円超とされる巨額の投資を伴うことなどを理由に、強い反対が出ていた。 今月13日に長崎氏は反対団体と直接の意見交換会を開いた。この場でも強い反対を受け、「特に鉄路に対する批判が強いため、登山鉄道を撤回する判断をした」と説明した。ただ、富士山の混雑が問題視され、来訪者コントロールの必要性は反対団体も認めていることから代替として富士トラムを提案する。 このシステムは道路に敷設された磁気マーカーか白線によって誘導される車両で、外観はLRTだが、実際にはゴムタイヤで道路を走るバス高速輸送システム(BRT)を融合したようなもの。軌道法が適用されるため、観光バスも含め一般車両は通行できないようにできるため、来場者の制御ができる。LRTで必要な鉄軌道の大規模投資が必要なくなり、初期投資を大幅に抑制できるメリットがある。 同様システムの国内での実績はないが、中国では一部実用化されているほか、マレーシアなどで実証実験が行われているという。 富士トラムは反対派の意見を考慮した代替案ではあるが、LRTの際に「地元の合意がなく、県がLRTありきで進めている」いったことが、拒絶反応につながり、反対運動が強まった経緯もあり、今回のいきなりの登山鉄道断念と富士トラムの新提案が地元に受け入れられるか注目される。(平尾孝)