古今亭佑輔は「悪女の佑輔」とは裏腹の“落語マッチョ”【令和7年巳年 落語界気鋭の二つ目】
【令和7年巳年 落語界気鋭の二つ目】 古今亭佑輔 イキのいい二つ目がひしめきあう落語界。なかでも飛びっきりの5人を演芸評論家の渡邉寧久氏が厳選。聞いて損なし! 見て感激!未来の大名人たちよ! 【写真】追悼・桂ざこばさん 「同じ演目」でも「同じ噺」はない“ざこば落語”の真骨頂 ◇ ◇ ◇ 人間国宝に認定された講談師・一龍斎貞水は「怪談の貞水」という呼称が似合った。今、落語界で「悪女の〇〇」と呼びたい芸人がいる。 古今亭佑輔(30)だ。 「悪女の佑輔」と言っていいほど、悪い女をしゃべるときの佑輔は、短刀のような切れ味を見せつける。大好きなホラー映画や小泉八雲の怪談の世界観を体の奥深くに染み込ませ、悪い女がきらめく落語「鰍沢」や「もう半分」などで、佑輔は地金をのぞかせる。 「ドロドロした噺が大好きなんです」 そんな思いが高じて、遊女の悲しみと呪いを描いた怪談噺「寝子」を自作し、高い評価を得た。「日本全国に怪談噺や怖い言い伝えがありますから、それを落語にしたいですね」。ビジョンは明確だ。クールで華奢な見かけとは裏腹に、“落語マッチョ”である。「体力がなくて疲れちゃうと、お客さまに噺が届かない」と鞭を入れ、毎朝のランニングに週に2、3回の筋トレを自らに課す。時間が許す限り、午前中に3~4時間の稽古を欠かさない。その取り組みが昨今、佑輔の落語の幹を極太にした。見違えるほど明らかに、だ。 (渡邉寧久/演芸評論家・エンタメライター)