仏壇も位牌も残っているが…都内在住の70代女性、亡き夫の故郷・北関東にある〈実家不動産〉を手放したい
夫を亡くしたある女性は、夫が保有していた「夫の実家」をどうするべきか、頭を悩ませていました。これからの時代の「正解」を探ります。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
亡き夫が保有していた不動産、これからどうしたらいいのか…
今回の相談者は、70代の田中さんです。2カ月前に亡くなった夫の遺産について、今後どうしたらいいのか相談に乗ってほしいと、筆者の事務所を訪れました。 田中さんの夫は大手企業の幹部だった人で、現役時代はかなりの高所得でした。また、出身地である北関東に、複数の不動産を保有しています。 資産内容は、数千万円の現預金のほか、都内の自宅、出身地には、いまは空き家となっている実家の土地と建物、空き地を保有しています。 「夫は大学時代から実家を離れて生活しており、いまの自宅も自分で購入しました。ただ、長男なので、親から実家やそれ以外の不動産も相続し、維持してきたのです」 空き家になっている夫の実家には、いまも亡き舅姑の位牌がある仏壇が置かれており、田中さんはこれまで、年に数回足を運び、掃除をしていました。 「うちには2人息子がいますが、夫の実家には子どものころ遊びに行ったぐらいで、将来、息子たちが継ぐことは考えられません。それに、私も年を取り、管理のために足を運ぶのは大変です。これからどうすればいいか、アドバイスしてもらえないでしょうか?」
懸念の相続税、「特例」を生かせば…
筆者の事務所の提携先の税理士が財産評価したところ、基礎控除の4,800万円を超えており、相続税の申告が必要だと判明しました。しかし、配偶者は1億6,000万円まで無税という特例があるので、その特例を生かし、田中さんが全財産を相続する場合は、相続税の納税は不要になります。 問題は亡夫の実家の不動産です。都内の自宅から遠く、田中さんも子どもたちも、今後活用する可能性はほとんどありません。維持すれば固定資産税や草刈りなどの費用がかかり、このまま残しても、子どもたちにとって良い結果にはなりません。 そうした状況から判断すると、早めに売却することが妥当だといえます。空き家や空き地のままでは固定資産税がかかるだけです。不動産は住んだり、活用したりしなければ、価値があるとはいえません。
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