愛らしいガラスの魚、聖武天皇の肘置きも 奈良国立博物館で正倉院展 6日から日時指定の観覧券販売
奈良の秋の風物詩「正倉院展」が奈良国立博物館(奈良市)で10月26日(土)から11月11日(月)まで開催される。76回目となる今年は、正倉院に伝わる貴重な宝物の中から57件(うち初出品が10件。模造を含む)を公開。観覧券は事前予約の日時指定制で、9月6日(金)から販売する。 【写真多数】かわいい“魚”から豪華な鏡まで。第76回正倉院展のラインアップ 正倉院は、奈良時代に造られた東大寺の倉。調度品や楽器、遊戯類、武具、仏具、文書、染織品など天平文化の華やぎを伝える品々、さらに西域や唐からもたらされたものまで、約9000件の宝物が良好な状態で保管され、現在まで受け継がれてきた。 今年の見どころの1つは、多彩なガラス製品。金泥で目盛が表された、定規ようの「碧瑠璃小尺(へきるりのしょうしゃく)」、愛らしい魚の形の「深緑瑠璃魚形(ふかみどりるりのうおがた)」は、いずれも色ガラスでできた装身具で、それぞれ別な色のものもある。唐の習俗にならい、当時の貴族らが、飾りとして腰帯に吊り下げていたという。近年作られたそれらの再現模造品、ガラス玉の原料、ガラス玉制作についての記述がある文書もあわせて公開する。 また、背部に大小18枚の花弁からなる宝相華文が七宝で施された鏡「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)」も展示。立体的で豪華なデザイン、七宝装飾の美を堪能できる。 聖武天皇が使ったとされる肘置き「紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)」も目玉。表面の絹織物には、ペルシアなどで生まれた葡萄(ぶどう)唐草文と中国の鳳凰(ほうおう)文を組み合わせた文様があり、豊かな国際色を伝える。 奈良国立博物館の三本周作主任研究員は「聖武天皇ゆかりの肘置きをはじめ、奈良時代の一級品が出陳されるほか、色とりどりのガラスを用いた宝物、目を見張るような精巧な細工が施された宝物も並び、天平の工芸美術の粋に触れることができます」と紹介。さらに今回、オリジナルに忠実に作られた再現模造品も多数展示される点を挙げ、「再現模造を見てもらうことで、当時の工人たちの息づかいも感じることができると思います。展覧会を通じて、宝物の素晴らしさ、それらを未来へと伝えていくことの意義を感じてもらえたら」と話した。
ラジオ関西