WBCで見えた侍ジャパンの限界?!なぜ土壇場でミスを冒したのか
WBCでV奪回に挑んだ侍ジャパンが2大会続けて準決勝で敗退した。22日(現地時間21日)、雨のドジャースタジアムで1-2で敗れた。懸念されていた継投ミスではなく、日本が世界に誇る武器だったはずの守りでミスが生まれた。しかも、世界が絶賛していた菊池涼介(広島)が痛恨のエラーをしたのだ。 米国での準決勝、決勝を前に課題とされていたのが「環境への適応」だった。 イレギュラーがほぼない東京ドームの人工芝から、内野は慣れない天然芝に変わった。国内で内外野共に天然芝のスタジアムは、広島が本拠地としているマツダスタジアムと、楽天のKoboパーク宮城しかない。菊池は天然芝でプレーしているし、直前のアリゾナ合宿で行われた2試合の強化試合でも、天然芝を体験していたが、芝の長さがドジャースのそれはまた違っていた。 菊池は「芝は短いので打球はそれほど死なない。守りやすい」と受け取っていたが、この日は雨が降っていた。ロスでは、珍しい雨に濡れた自然芝と硬い土は、名手でさえ計算の立たないものになっていた。 菊池は右膝をつきグラブの先をグラウンドにつけて打球を待った。基本姿勢だが、予期したそこへ打球は来なかった。スリップして打球の方向が大きく変わった。菊池はグラブの右側に当てて弾く。一瞬、菊池は何が起きたかわかっていなかった。打球を追うタイミングも遅れ、打球が遠くへ転がったため、4回一死からイエリッチに二塁まで進まれることになった。 「芝が滑る状態というのは頭に入っていた。イレギュラーに反応できなかった。本当に僕の力不足。あそこを二塁へ行かせてしまったのが本当にミスですね」 オランダ代表のオリオールズの正二塁手のスコープが「メジャーでも見ることができない」と大絶賛した菊池でさえ反応ができなかった。 「エラーと四球が点に絡む」は、野球の鉄則。ここまでわずか1安打のピッチングを続けていた菅野は、マカチャンに目のさめるような当たりのレフト前タイムリーを打たれた。 結果的に決勝点につながる痛恨のファンブルを8回に犯した松田宣浩も天然芝に戸惑った。8回一死二、三塁で内野は前進守備隊形を取っていた。だが、ジョーンズの詰まったバウンドのゴロに、一瞬、躊躇して、ハーフバウンドとなった打球をお腹の前で包み込むようにして足が揃った。グラブに収まりかけた打球が、ぽろっとこぼれた。松田はすぐさま拾ったが、ホームは間に合わず右ひざをついたまま、一塁へスロー。一塁は間に合ったが、ジョーンズに打点を刻まれることになった。 「弾くと確実に1点が入るケースだったので、必ず体でとめてグローブに入ってさえいれば、確実にホームはアウトだと思ったんですが。本当に悔しいというか残念です」 大会前に松田と話をしたとき、「足が速い選手が多いので、少しポジションを前にしなければならないのかもしれない」という考えを口にしていた。そういう小さなほころびが、勝負の分かれ目になることがわかっていたのだ。人一倍、責任感が強く、スタメンを外れた試合でも、誰よりもベンチで声を張り上げてきた熱男も、慣れない天然芝と、雨によるバウンドの変化に慌てた。 第1回の優勝メンバーで現地で解説した里崎智也氏は、「走者が気になったのか、打球を処理する前に体が先に前を向いてしまったように見えた。慌てたのでしょう。それがプレッシャー。落ち着いて処理していればタイミングはアウトでした」と、このプレーを見た。