妹・詩の敗戦瞬間、兄・一二三は… 鈴木桂治監督が明かす アップ場騒然も「一二三はパッと切り替えて畳みに上がっていった」称賛惜しまず「世界の柔道の顔になる可能性がある」
「パリ五輪・柔道男子66キロ級・決勝」(28日、シャンドマルス・アリーナ) 世界ランク6位の阿部一二三(パーク24)が同8位・ウィリアン・リマ(ブラジル)に勝ち、五輪2連覇を達成した。妹・詩の思いも背負い、決勝に臨んでいた。大会前、一二三は「必ず兄妹での2連覇を達成する。この大会に向けて3年かけてやってきた。かなり成長した」と話したが、妹は2回戦で敗退。客席で見守った詩の無念を晴らすべく、最後まで集中力を切らさなかった。 【写真】号泣のち歓喜の涙 詩、突っ伏して泣き崩れる 試合後、日本男子の鈴木桂治監督は妹・詩が負けた瞬間の一二三の様子を明かした。「一緒にモニターで見ていて、アップ場はうわぁってなっていたんですけど、一二三はすぐパッと気持ちを切り替えて、畳に上がっていった」と振り返り、「そこで我々も一二三は一二三だぞという言葉をかけることは絶対したくなかった。一二三の戦いなので。阿部一二三が金メダルをとるための調整をしっかりと続けたと思う」と目を細めた。 日本男子としても今大会初の金メダル。「我々もそうですし、不安を吹き飛ばしてくれるような、素晴らしい戦いをしてくれた。いつも通りといえばいつも通りなんですけど、五輪でいつも通りやるというのを体現してくれた。感謝している。ありがとうという言葉を伝えたい。一二三も色んなものを背負って試合をしていたと思う。きょうの詩選手のことも受け入れながら、2人同時の金メダルが大きな目標だったと思う。なくなったのは本人にとっても精神的なブレはあったかもしれないが、みせることなく戦ってくれた」と、絶賛。「2連覇をした選手、大野選手もそうですし、色んな人からみられる存在、スーパースターのような存在になっている。柔道界でそういう存在になれる選手って限られている。今日の2連覇で柔道界の顔になるという素質はある。世界の柔道の顔になる可能性がある」と、うなずいた。