寝起きから楽しい本気の朝飲み/むぎが氏とワンルーム酒場(7)独身女の早朝居酒屋
飲むと言ったらわが家一択……!カクテルコンペティションにて特別賞を受賞し、バーテンダーの経験もあるYouTuberむぎが氏。YouTubeでは連日、晩酌の様子を配信し、「朴訥(ぼくとつ)とした語り口に癒やされる」「手際のいい調理は見ていて気持ちいい」「画面からお酒の味が伝わってくる」など話題沸騰中。お酒を愛し、お酒に愛されたといっても過言ではない彼女による、ワンルームで楽しむ晩酌エッセイ連載。連載第7回は、寝起きから楽しい「本気の朝飲み」をご紹介! 【写真】早朝居酒屋で楽しんだ、バラエティ豊かなおつまみの数々 ■独身女の早朝居酒屋 普段一緒に飲んでる友達と、人生であと何回一緒に飲むことができるのか、たまに考える。あと、1000回かもしれないし、もしかしたら今日で最後かもしれない。朝ちゃんと目が覚めて1日を迎えられるのも、あと何回だろうか。どこか無限にあると思っているが不確かな世の中で確実なことは、いつか終わりがやってくることだ。 ビーーッビーーッビーーッビーーッ……!6時半のアラームで目が覚めた。本当は小鳥たちのさえずりをアラーム音に設定して優雅にさわやかな朝を迎えたいのだが、そんなもんじゃ私は目覚めない。むしろこのうるさいアラームでさえ、起きないときがある。 今日は土曜日。休みの日はアラームはかけないのだが、今日は朝からやりたいことがある。それは、本気の朝飲みだ。 昨日の仕事終わり、ワイワイしている飲み屋街を歩いてると、体が酒気分になってフラッと居酒屋へ入ろうかなと思ったが、どうも平日だし気力がなく、いつものように宅飲みコースを決意。しかし、気づいたら飲む前に気絶してしまった……。 そのリベンジではないが、今日は早朝居酒屋風に本気の宅飲みをする。こんなことをすると、休みの日はやることがない哀れな酒クズ独身女だと思われるかもしれないが、その通りです。軽く支度をして、早朝からやってるスーパーに買い出しに行く。 休日の朝は街もまだ眠っていて、静寂でとても落ち着く。ワンちゃんの散歩をしている人も多く、すれ違いざまにワンちゃんをチラ見して一瞬だけ癒やされるよい時間帯でもある。たまにワンちゃん同士の絡み合いを見て、ぽっと微笑ましい気持ちにもなる。 スーパーに着き、スマホにメモした材料を買っていく。まずは、ナムルが食べたいので豆もやしを探す。……しかし、いくら探してもない。普通の緑豆もやししかない!これでは私の理想のナムルは作れない!!!現実を受け入れられずにもう一周探しても、結果は同じだ。ないものはない。渋々ナムルはあきらめることにした。 あとは、鶏もも肉・ピーマン・サーモン・トマト……など買い出し、セルフレジでピッピとお会計してお城(私のお家)へ帰る。 お家についてもまだ7時過ぎくらいだ。いつもなら、ぬくぬくと目を覚ましてボケーっと「へそを縦にする方法」とかググり、よだれを垂らしながら猫動画を観て、気づいたら二度寝してる時間帯だが、今日は気合いを入れた朝活、本気の早朝居酒屋だ。 居酒屋風ということで、まずは生ビールを飲もう。アサヒの生ジョッキ缶を開ける。 「「ブジュウウウウ~~~!!!」」 冷蔵庫でしっかり冷やしていなかったからか、ビールの泡が溢れ出してきた!!缶に口を近づけ、泡をすかさず飲んでいく。……というか、文字通りすすっていく。泡だけが口の中に入り、喉越しふわふわ。なんと新感覚!!泡が落ち着き、ようやくビールにたどり着いた。今日も無事に生きて、朝ちゃんと目が覚めたことへ乾杯!と心の中で唱えて、ゴクゴクと飲み込む。ほろ苦くキレがあり、泡が柔らかくおいしい。素晴らしい技術です。 よし!今日のHPはMAXなのでサクサクっと華麗なステップで料理をしていこう。 1品目は冷やしトマト。……と言っても大きめのトマトを半月のような形に切ってオリーブオイルと塩をかけるだけだ。1番手間がかからない一品。トマトに包丁を入れると、少しだけ柔らかく熟してるのを感じた。甘くておいしそう!こだわりのオリーブオイルは、サイゼリヤのオリーブオイル。いつもフレッシュでおいしいのです。スーパーで買ったヒマラヤの岩塩をザッザッザッとふりかけて完成! 2品目は、サーモンとキュウリを混ぜて味付けした一品を作る。キュウリはペストル(棒状の器具)でザクザク叩き、カチ割りにする。何にもしてないのに叩かれて、少しかわいそう。漂う瓜系の青くさいフレッシュな香りに、叩かれ慣れたキュウリの哀愁すらも感じる。負けるなキュウリ。そこへサーモンをぶち込み、ごま油・塩・鶏がらスープの素・胡麻を経験に基づき、目分量入れて混ぜるだけ。 3品目は、本日のメインおつまみ、焼き鳥だ。1枚の鶏もも肉に塩をまぶし、鶏皮を剥ぐ。鶏皮もあとで串刺しにするので一旦置いておき、鶏もも肉を消しゴムサイズに切っていく。果たして消しゴムサイズというのが正しい表現の仕方かはわからないが、ほかに思い浮かばない。まぁそのくらいに切り、1本のネギもゲームボーイアドバンスのソフトサイズに切っていく。串に鶏肉、ネギを交互に串刺しこれで消しゴムとゲームボーイアドバンスソフトの串焼きの完成だ(違う)。 鶏皮は縦長に何枚か切り、鶏皮の先端を串に刺し、くるくるまわして後端を串に刺して、小さくぎゅっとして完成。 野菜はピーマン。半分に切って種をとって串に刺して終わり。本当はレバーとかつくねとかやりたかったのだが、下処理とか工程がめんどくさかったのでやめた。 とりあえず、焼き鳥の仕込みは終わり。ビール飲んでひと休憩しよう。YouTubeを開き、推し猫のショート動画を拝見。はぁ、癒やされる…。実家で飼ってる猫のひろしを思い出す。この前、夢にひろしが出てきて、もしかしたらひろしも私の夢を見てるのかなとか思ったら恋しくなった。ちなみにひろしは私のことそこまで好きではないと思う。 ひと息ついて、4品目を作ろう。次は定番のだし巻き卵だ。とは言っても普通のだし巻き卵ではなく、焼きのり明太子だし巻き卵を作る。冷蔵庫から冷えた卵を取り出し、贅沢に3つ計量カップの中に入れ、白だしと少々の醤油を加えてしっかり混ぜる。本当は厚焼き卵用のフライパンがあればいいのだが、我が家にはない。買う経済力がないのではなく、物を多く持ちたくないというか手元にある物で代用できればそれでやる。今思えば、実家にも厚焼き卵用のフライパンはなくて、おばあちゃんが普通のフライパンで作っていた。無意識に見事継承していたようだ。 片手鍋に油を引いてチョイ中火で温まるのを待つ。温まったら溶いた卵を鍋の底が埋まる程度に入れる。……少し火力が強かったみたい。卵が固まってきてその上に焼きのりを乗せて、器用に卵を巻いていく。そして、また溶いた卵を入れて焼きのり乗せるのを3回くらい繰り返して、焼きのりだし巻き卵の完成。包丁を入れると、卵の断面に海苔が挟まってる。そう、これがやりたかったのだ!やったー!!……とはいえ、火が強めだったので固めのだし巻き卵になった。まだまだ修業が必要だ。仕上げに明太子チューブを上にちょこんと乗せて完成! 調理はとりあえず以上で終わりだ。朝だから集中力が高く、満足のゆく料理ができた気がする(気がするだけ)。ビールを飲み干し、さあ、ハイボールを作ろう。本日のウイスキーはアードモア レガシー。スーパーでよく見かけ気になり購入したウイスキーだ。スコットランドのハイランド地方で作られるウイスキー。シングルモルト(一つの蒸留所の原酒で作られたウイスキー)でピーテッド麦芽とノンピーテッド麦芽を使用して作られる。3500円前後くらいで買った記憶がある。 いつものグラスに氷を入れ、バースプーンでくるくる回してグラスを冷やす。溶けた水を流しに捨てアードモア レガシーを30ミリリットルほど入れる。炭酸メーカーで作ったソーダをゆっくり注ぎ、バースプーンで氷を持ち上げるように混ぜる。シュワシュワとしたソーダの音が酒欲をそそる。 それではいただきます。 口に含むとほんのりとスモーキーな風味がきて、クリーミーでバニラのような味でさわやかに飲める。食事の邪魔をしない食中酒によさそうな味わい。 棚から焼き鳥器を取り出し、テーブルに乗せ、電源を入れる。焼き鳥器の上に先ほど仕込んだねぎま・鶏皮・ピーマンを乗せて準備完了!焼き鳥が焼けるまでゆっくりほかのつまみを食べながら待とう。まずは冷やしトマト。いただきます。案の定甘くてすっきりおいしい……!塩をかけたから余計甘味が強調されてよき。だけど、もはや冷やしトマトではなく、ぬくぬくトマトになってる。まぁこのくらいの温度が体によいということにしよう。 お次にサーモンキュウリの一品。キュウリとサーモンを箸でとり、お口へ運ぶ。サーモンとごま油のこってりとした油っけをキュウリがさっぱりとしてくれておいしい!!味付けも中華風で、とてもバランスがいいお味だ。 アードモアハイボールをごくっと飲む。うむうむ。予想通り、食事の邪魔をしない硬派な味わいだ。焼き鳥をひっくり返すが、まだまだ焼くのに時間がかかりそう。だけど椅子に座りながら調理できるからめちゃくちゃ楽。 さぁ、今回の料理で1番難易度が高かった焼きのり明太子だし巻き卵を食べてみよう。だし巻き卵を一口噛むと、なかなか固い。理想はもう少しふわふわで柔らかいのがいいのだが、火が強すぎたせいか少々強気なだし巻き卵になった。中の海苔はあるっちゃあるけど、そこまで主張せず香る程度だ。厚焼き卵用のフライパン買おうかなと少ししょんぼり。明太子の塩辛さが余計に沁みる。 焼き鳥を返してみるが、まだまだ焼き切れてない。消しゴムサイズが大きすぎたのかしら。思い返してみれば、お店で出てくる焼き鳥は消しゴム(Sサイズ)くらいな気がした。私のは消しゴム(Lサイズ)くらいだ。ピーマンをみると、ちょうどよい感じに焼けてるので食べてみる。塩をつけていただきます。…苦味が堪らない。ボリボリとさっぱり食べられておいしい。ピーマンっておいしいのに、なんでアンパンマンの仲間にいそうな名前なのかしら。 鶏皮は焼けてきたが、カリカリにして食べたいのでまだまだ耐えてもらおう。ハイボールを飲みながらほかのつまみをボリボリ食べ、ねぎまと鶏皮が焼けるのを待つこと3億年……(嘘)。ねぎまも表面はいい感じに焼けてるが中もしっかり焼いていきたいからまだ耐えてもらい、鶏皮は表面がこんがり焦げていい感じになってきた! それでは鶏皮からいただこう。鶏皮をパクッと食べると外側ジューシーで中がじゅわとろ!めちゃくちゃおいしいではないか!ハイボールを流し込み優勝。今日のおつまみの中で1番ハイボールと合うかもしれない(ねぎまはまだ食べていないが)。ねぎまもそろそろいいだろうと思い、まずは鶏もも肉から食べてみる。……とてもほくほくだ。だけど焼きすぎたのか少しだけパサパサになりジューシー感に少々弱さを感じる。私が鶏もも肉を切るとき、消しゴム(Lサイズ)にしてしまったせいかもしれない。 お次にねぎを口に運ぶ。おいしい!!ねぎの外は固めで噛むと中がめちゃくちゃとろーりと顔を出し、こんなねぎ食べたことない!ってくらいおいしい!私は勘違いしていたのかもしれない。ねぎまの主役は鶏もも肉と思っていたがもしかしたらねぎの方が主役なのかもしれない。いや!!今回は私の寸法ミスで鶏もも肉がパサパサになっただけで、普段は鶏もも肉も輝いている。だからあなたたち。ダブル主演よ。 ハイボールを流し込みねぎまに思いを馳せる。そんな独身女の休日の朝。今日もすてきな1日になりそうだ。