夫婦の寝室は分けるべきか、仲を円満にする「睡眠離婚」のコツ、すでに日米で2~3割強が選択
ベッドの共有がむしろ関係悪化になる恐れも
ベッドを1つにすることが精神的なつながりと親密さを向上させると考える夫婦もいれば、それほどこだわらない夫婦もいる。 ニュージーランドにある「ベター・スリープ・クリニック」の臨床責任者で睡眠心理学者のダン・フォード氏は、夫婦であっても独りで寝た方が快適だと感じる理由はたくさんあると話す。相手がいびきをかいたり、10人に1人は悩まされているという慢性的な不眠症だったりする場合もある。 「お互いの体内時計が大幅にずれていて、ベッドに入りたいタイミングが異なる夫婦もいます。それならば、相手の睡眠を邪魔しないように別々のベッドで寝た方がましだと感じるのです」と、フォード氏は言う。 2024年1月8日付で学術誌「Current Biology」に発表された米ミシガン大学による研究は、一緒に眠ることで睡眠の質が損なわれ、関係の悪化につながる恐れがあることを示している。さらに、米カリフォルニア大学バークレー校の研究者が2022年8月に学術誌「PLOS Biology」に発表した研究では、十分に睡眠がとれていないと、他者に優しくしようとする行動が減るという結果が出ている。 米国人教師のタミ・シャダックさんは、夫の睡眠時無呼吸症候群のせいで寝不足の日々を過ごしていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行中、咽頭炎にかかったため別の部屋で寝ることにした。それ以来、元の寝室には戻っていないという。 「睡眠は睡眠です。意識がない時に相手と仲を深めることはできません。親密さは、起きている時間に経験する膨大な一瞬一瞬のなかで作られるものです」 睡眠離婚を成功させる鍵は、どちらか一方の部屋を「予備の部屋」と呼ぶのではなく、それぞれが独立した「自分の部屋」を持つことだと、スタンリー氏は言う。「自分の好きなように部屋を飾り、寝具も自分の好みのデザインでそろえるといいでしょう」 また、別々のベッドで寝ることは、夫婦関係の強さとは関係ないと指摘する。「まったく普通のことです。睡眠離婚は、懲罰ではありません。お互いのために最善の形をとるということです」
文=Claire Turrell/訳=荒井ハンナ