「犬連れ登山」は是か非か “犬お断り看板”の実態を探る
「太郎山」の看板の話に戻る。私は、特別保護地区での規制や「地域のマナーを尊重してください」という要請は、どこの山でも指針の一つとなると考えているので、これまで自粛要請の看板があればそれに従ってきた。しかし、今回の「他の登山者の迷惑になりますので」という文言は初めて見た上にあいまいな理由だと感じた。また、地面に置いてあるという設置状況、連絡先や〇〇課といった担当部署名がなく単に「上田市」と書いてあったことに、強い違和感を感じた。そのため、「リード着用・糞尿の処理をしっかりするなどのマナーを守った上で入山し、他の登山者らに注意されたらその旨説明する。それで納得してもらえなければただちに下山する」という判断をした。 その結果、10分ほど歩いた所で案の定、登山者に注意され、理解が得られなかったためにただちに下山した。お互いに後味の悪い結末となってしまい、やはりとりあえずは看板の要請に従うべきであった。今は条件付きで入山した自分の判断は誤っていたと反省している。 下山後、その足で“設置者”である上田市役所に向かった。“設置者”と“”つきで書いたのは、設置理由と経緯を問い合わせた結果、「上田市が設置したという事実を確認できない」という回答だったからだ。 太郎山には市と民間の複数の所有者がおり、地域の市民団体が登山道の整備などに加わっている。そこで、その団体の会長さんとも電話で話したのだが、「市が看板を設置するとなれば、必ず我々の所に話があるが、何も聞いていない。こちらからお願いしたこともない。私はその看板の存在自体を把握していない。個人(が設置したもの)ですね」とのこと。今も市と市民団体が調査を継続してくれているが、どこの誰がいつ設置したのか不明だ。 結局、犬を連れて太郎山を登って良いのか。ダメなのか。市と市民団体は共に「良い」という見解だ。「犬を連れての入山をお断りする理由がありません。迷惑を被ったという通報や環境への影響が報告されたこともありません。最近はクマやイノシシの出没が増え、注意喚起していますが、犬と一緒にいた方が安全だという見方もあります」(上田市森林整備課・米田寛之さん)。しかし、「設置者が分からない以上、勝手に撤去するわけにもいかない」とのことで、「上田市」を名乗るこの看板は、今も太郎山の3か所に立っている。