焼肉食べ放題店の元経営者が明かす、注文されると“苦しい”メニュー。上・中・下の価格帯で店が一番儲かるのは
注文されると収益的に苦しい部位は?
一般的に焼肉食べ放題の費用構造は原価35%、人件費25%、業務費10%、管理費20%、営業利益10%の店が多い。業態にもよるが飲食店の場合、重点管理費用は当然に原材料費と人件費であり、これら「FLコスト(材料と人件費)」を徹底的に管理すれば、儲けが出る。 食べ放題の品目の中でも、原価10%の商品もあれば70%の商品もある。メインの焼肉の中でも塩牛タン、歩留まりにもよるがロース、カルビ、上ハラミなどは原価が高く、これらに集中すれば店は収益的に苦しい。特に希少部位である牛タンは上価格帯の食べ放題でしか入れられないのが現状である。 高原価の肉ばかり食べられると原価が高騰するから、他の一品メニューに分散させて原価率の安定化に努める。ホルモン系統、キムチ、サラダ、わかめスープなどの低原価商品に誘導し、推奨販売させれば、標準原価である35%を維持でき、店も顧客も双方が満足する。 食べ放題店は必ず複数のプランを用意しており、上・中・下の価格帯になっている。その中で、和牛や国産牛を入れた上位のプランは儲けが一段と違う。和牛などの霜降り肉は脂でしつこくなるから、量を食べられず、すぐにダウンしてしまうからだ。最初はピンク色の霜降り肉を見て、歓声を上げるが、実際に食べるとなるとそれは別である。すぐにあっさりとした原価の低いサラダやキムチなど一品メニューに移行してしまい、店としても単価は高く、原価も低いドル箱プランである。
孤食をターゲットにした「新たな焼肉」スタイル
最近は1人で焼肉を食べたいといった潜在ニーズを顕在化させた店が店舗数を増やしている。それが東京都を中心に全国86店舗 (24年3月6日付)を展開する「焼肉ライク」だ。 焼肉は1人では入りにくいものだが、その1人客をターゲットにした小型(20坪程度)で効率の高い焼肉店の存在感が出てきた。孤食を好み、気兼ねなく焼肉を食べたい1人焼肉の需要に応えた店づくりで、客席回転率の向上による坪当りの売上・利益を拡大させている。 焼肉ライクは「焼肉をもっと自由に」をキャッチフレーズに、フランチャイズの加盟店を積極的に応募し、多店舗展開をしている。18年8月、東京・新橋に1号店を開店した。生みの親はなんと、牛角の創業者でもある西山知義氏が率いるダイニングイノベーションだ。 店の特徴としては、1人でも気軽に行ける焼肉屋、焼肉のファストフード、自分風にカスタマイズした焼肉を目指し、1人1台の自分専用のロースターを設置し、周囲の目を気にすることなく、自分のペースで焼肉を堪能できる店づくりにしている。