老後の人生を「大失敗」する人には共通点があった…元伊藤忠商事会長が明かす「定年後を成功させる技術」
とりあえずやってみる
さらに社長時代に遡ると、二〇〇二年七月八日には「経団連幹部と朝食会」、二〇〇三年七月八日には「仙台の東北電力を訪問」といったことが書かれています。 このように一〇年日記には、どこで誰と会った、どこへ行って何をした、という日々の事実だけを淡々と書いています。何年の何月何日に自分が何をしていたか、その日付のページを開けば一〇年分の行動が一目でわかるわけです。 ただ、一〇年日記や二〇年日記には、その行動の結果どうなったかまで詳しく書くスペースはないので、そういうことは別のノートに一〇行か一五行ほどで書いています。このノートには自分の心情、たとえば、大きな自然災害があって考えさせられたこと、友達が訪ねてきて感じたことなども書いています。 四〇年間日記を続けてきた私ですが、現状や過去の日記を読み返すことはほとんどありません。私にとって日記は、その日の行動が自分の「生きる指針」に背いていないかを知ることを一番にしているものだからです。 私の「生きる指針」をひとことで言えば、「自分に対しても他人に対しても、嘘をつかない」ということです。 人は誰でも、自分なりの「生きる指針」、言葉を換えれば「生活するうえでの自然な心構え」をもっていると思います。指針に反した行動をしたのか、日記をつければわかります。反省すべき点は反省する。その機会を与えてくれるのが、日記の最大の効用だと言えます。 人生はまだまだ長いんです。日記帳を、明日をよりよく生きるためのツールとし、前向きの気持ちで毎日を送ることが重要です。 さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。
丹羽 宇一郎