<サッカー五輪最終予選>五輪王手のUー23に今、必要なものとは?
だが、はっきり言えば、U-20ワールドカップを逃し続けたこの世代は、国際経験の経験が圧倒的に少なく、アジア予選を勝ち抜いた経験もない。若いころにU-17ワールドカップに出場した経験のある選手たちは数人いるが、総じて国を背負った戦いにおいて、自信を付ける機会のなかったナイーブなグループなのだ。 そんなナイーブなグループに、アジア予選を勝ち抜き、自信をつけさせてやりたい。なんとしてでも世界大会に出場させ、経験を積ませてやりたい。U-19日本代表が4大会連続してU-20ワールドカップ出場を逃し、A代表がブラジル・ワールドカップで惨敗しただけでなく、アジアカップでもベスト8で敗退したという、日本サッカーの悪い流れを断ち切りたい。 自分たちのレベルと、日本サッカーの「五輪出場はなんとしても死守しなければならない」という現状を踏まえた結果、チームを率いる手倉森誠監督は、チームの立ち上げの頃から守備に重きを置いた手堅い戦い方を志向し、「自分たちのサッカー」「攻撃的なスタイル」などではなく、「柔軟性や割り切り」「取れなくても、取られるな」といったコンセプトを植え付けてきた。 押され続けながら耐えしのぎ、相手がペースダウンしたところで仕留めたイラン戦は、まさに、その真骨頂のようなゲームだったと言える。
男子サッカーのアジアの出場枠は3のため、26日に迎える準決勝は、出場権獲得の懸かった大一番だ。対戦相手はまだ決まっておらず、23日19時半(日本時間25時半)から行なわれるUAE対イラクの勝者となる。 どちらが勝ち上がってきたとしても、イラン戦と同じく、まずは守備から入り、粘り強く我慢しながらゲームの流れを読み、勝負どころを見極める戦い方になるだろう。 もっとも、我慢比べに勝ったイラン戦でも、バーやポスト、GK櫛引政敏の好セーブに助けられたシーンが多く、失点していてもおかしくなかった。 相手の運動量が落ちてくるまで、もっと盤石に我慢するためには、中盤でのボール保持率を高め、ゲームをコントロールする必要があるだろう。そうして相手を揺さぶることで、相手の運動量を削ぐことにもつながっていく。遠藤とボランチを組んだ原川が、次戦に向けての改善点を指摘する。 「攻撃のところでサイドチェンジを交えながら揺さぶっていけば、もっとスペースができたと思うので、チームとしてどこにスペースを作って攻撃していくかを共有できれば、もっと効率の良いサッカーができて、ゴール前まで運べると思います」 経験のないチームは、チームとても、個人としても、今まさに戦いながら経験を積んでいる最中だ。 「競り合いに関しては最初のうちから勝てていたので、やれるなって思ったし、繋ぎの部分の細かいミスも時間を追うごとに減っていったので、練習で改善できれば、まだ良くなるんじゃないかと思います」とオナイウが言えば、左サイドバックとして出場し、タイとの2戦目では不本意な出来に終わっていた亀川諒史も「こういう舞台は初めてなんですけど、タイ戦と今日、経験できたことで、これが自分のプレーなんや、というのを思い出せたと思います」と語る。 痺れるようなゲームを経験し、またひと回りたくましく成長したチームが26日、いよいよリオ五輪への出場権を懸けた戦いに挑む。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)