日本の政局混迷で植田日銀の政策舵取りはますます難しくなる
日銀はハト派姿勢を強めるとの観測も
欧州経済も足踏み状態にあり、ドイツはリセッション(景気後退)に陥っている。米国では「トランプ2.0」政権の誕生がちらつき、その場合、確実に訪れる巨大な貿易戦争の可能性は日本株式会社の投資計画を脅かしている。 主要国・地域の中央銀行の多くでは、政治の風向きの変化が金融政策のゲームチェンジャーになることはないだろう。だが、日銀はかねて政治的な圧力に屈することが多かった。 植田は2023年4月に日銀総裁に就任してから8カ月の間、政府・与党側の反発を買うことを心配して積極的な行動を控えていたようだ。植田は同年中に利上げを見送ったことで、日本の金利をゼロ近辺からもっと引き離す機会を失った可能性がある。 今年に入って植田は2度の利上げに踏み切った。しかし世界の市場が激しく反応したため、植田のチームはおびえてしまった。以来、日銀は現状を維持している。 政局が流動的になっているいま、植田日銀は金融引き締めに様子見姿勢で臨む理由がさらに増えている。 スイスの資産運用会社ユニオン・バンケール・プリヴェ(UBP)のシニアエコノミスト、カルロス・カサノバは、自民党の敗北は「財政政策の緩和を招き、日銀のハト派姿勢を強める可能性がある」とみる。「政治の不透明感が強まれば、市場のボラティリティーが高まり、追加利上げはさらに遅れるかもしれない」とも予想する。 モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフ日本エコノミストも「政治の不透明感が続いたり市場が乱高下したりすれば、日銀が今年行動するハードルは高くなるかもしれない」と言う。 また、野村のアナリストらは「市場は日本の経済政策について、ハト派色を強めるリスクが高くなったとみている」と解説している。 ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ステファン・アングリックは、こうした「不透明感」のために日銀は今回の会合で金融政策を現状維持する公算が大きいとの見立てだ。一方で「ここ数週間、円が下落しているため、利上げの可能性は完全には排除できない」とも言及している。