ウクライナ軍のクルスク防衛、ドローンの陰で対戦車ミサイルも活躍
ロシア西部クルスク州方面の戦闘の様子を映した多くの動画から、ウクライナ軍が8月以来占領している650平方kmほどの突出部に対する反撃でロシア軍が失った装甲車の大半を撃破したのは、自爆型のFPV(一人称視点)ドローン(無人機)だと思ってしまいそうになる。 だが、それは間違いかもしれない。FPVドローンは操縦士にライブ映像を送るので、その攻撃の証拠は十分にある。ただ、それに注目しすぎると、ウクライナに対するロシアの全面戦争のほかの方面はともかく、クルスク州では戦場の現実を捉え損ねかねない。 11月7日以来、突出部を攻撃しているロシア軍の車両への命中弾の多くは、実際のところウクライナ軍のドローン操縦士でなく、対戦車ミサイル兵が撃ち込んだものだ。 突出部の北西周縁でウクライナ側の防御を支援しているウクライナ海兵隊のドローン操縦士、Kriegsforcher(クリークスフォルシャー)は「誰も彼もFVPが主役だと思っているようなのはとても面白い」とソーシャルメディアへの投稿に書いている。 Kriegsforcherによると、自身のチームが守るエリアでロシア軍の第237親衛空挺強襲連隊は10日と12日に装甲車を計17両失った。 これらの車両の大半は地雷や対戦車ミサイルを食らって動けなくなった。「FPVドローンが任務を始めたのはそのあとです」とkriegsforcherは説明している。使われている対戦車ミサイルは米国製のジャベリンかウクライナ製のストゥーフナ-Pだろう。 せいぜい1kgがそこらの爆弾を抱えて数kmを飛ぶFPVドローンは、走行中の車両を直接攻撃して動けなくすることよりも、すでに止まっている車両にとどめの一撃を加えるのに適している。 kriegsforcherの見るところ、撃破された装甲車のうち走行中にFPVに仕留められたものは10~15%程度にすぎないという。 ロシア軍は突出部に対する攻撃を激化させたこの数週間だけで、ゼリョーヌイ・シュリャフ村付近の10平方kmほどの区域で車両を100両ほども失っている。 ウクライナが年間100万機超のペースで製造しているFPVドローンは高度化し、その操縦士たちのスキルもどんどん高まっているものの、1990年代に開発されたジャベリンほどの破壊力はない。 火力の点では重量約16kgのジャベリンはFPVドローンざっと12機分に相当する。そして、血気盛んなことで有名なウクライナ軍空挺部隊の手にかかれば、それはさらに破壊的なものになる。 クルスク州では一見、対戦車ミサイルよりもドローンの活躍のほうが目立つ裏で、実は前者がなお後者をしのぐ威力を発揮していることは、ほかの物事と同様に機械化戦でも、本当の姿は見た目と違う場合があるということをあらためて思い起こさせる。
David Axe