シーズン15勝、防御率1.67の菅野智之でも受賞ならず 沢村賞の選考基準をめぐって賛否両論うずまく理由「時代に合わなくなりつつある」
今季の沢村賞選考委員会が10月28日に都内で開かれ、今年は該当者なしと決まった。該当者なしは、2019年以来5年ぶり6度目。 【動画】巨人の大エース・菅野智之の「歴史的な」奪三振シーン 選考委員会の委員長を務める堀内恒夫氏は熟考の末に選出を断念したと説明した。 選考過程においては今季15勝をマーク、防御率1.67と最多勝、最高勝率の投手二冠を獲得した巨人の菅野智之や、同じチームで12勝をマーク、防御率1.95の成績を残した戸郷翔征、パ・リーグではともに14勝で最多勝に輝いた日本ハム・伊藤大海、ソフトバンク・有原航平らが候補にあがったとされる。 いずれの選手も圧巻のパフォーマンスを残したが、5年ぶりに受賞者なしとなった背景には、沢村賞受賞の高いハードルが影響しているようだ。 沢村賞には7つの基準が定められている。 (1)15勝以上の勝利数、(2)150以上の奪三振数、(3)10以上の完投試合数、(4)2.50以下の防御率、(5)200イニング以上の投球回数、(6)25以上の登板数、(7)6割以上の勝率 シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる同賞は昨季まで3季連続でオリックスに所属していた山本由伸が受賞していた。 21、22年は5項目、23年は4項目をクリア。圧巻の成績で日本球界が誇る絶対エースとして存在感を示していたことも知られている。 一方、今季も複数項目をクリアした投手はいるが、高い牙城は崩せなかったことになる。 受賞はならなかったが、巨人・菅野は近年低迷が続いていたが、今季は15勝と大きくジャンプアップ。直球のキレも戻り、4季ぶりのリーグ優勝の立役者の一人となった。 2年連続最下位からリーグ2位と躍進した日本ハムでは開幕投手も務めた伊藤がシーズン通して、存在感を示した。26試合に登板し、18試合でQS、5完投は立派。まさにチームを支える快投で投手陣の先頭で引っ張った。 今回の選考結果をめぐってはファンの間でもSNS上では「突出した選手がいなかったから仕方がない」と選考に理解を示す声がある一方で、投手分業制が進む中で「年間200イニングは厳しい」「(選考基準が)時代に合わなくなりつつある」という指摘もある。 先発完投型の選手をたたえる賞という枠組みの中で、令和の野球界にも新たな見識、選考基準の見直し、アップデートが必要ではないかという声だ。 果たして来季以降、沢村賞に該当する投手は再び現れるのか。引き続き、注目が集まりそうだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]