国民から大顰蹙買った韓国・尹錫悦大統領の戒厳令、暴走したら誰にも止められない「大統領制」の限界が露呈
■ やはりモンテスキューを疑え 韓国の混乱を見ていると、モンテスキューが唱える完全な三権分立、行政権の形としての大統領制に疑問を感じざるをえない。 11月23日の本コラムで、私は、この点について問題提起したが、それは、来月に2度目のトランプ政権が発足するアメリカを危惧して書いたものである。そして、今回の韓国の戒厳令騒ぎで、その思いをさらに強くしたのである。 (参考記事)モンテスキューを疑え、斎藤元彦、トランプ、バイデンの決断と行動から「大統領制の欠陥」を考える(JBpress 2024年11月23日) 日本やイギリスのような議院内閣制であれば、与党ときちんと協議しないまま戒厳令を宣告するようなことはない。今回の尹錫悦の暴走は、与党との事前協議もないままの独りよがりの決定であった。 私は、日本の政治家として、議院内閣制下で大臣を務めたとともに、東京都の都知事、つまり大統領の職責を担った。その経験から、先のコラムで、 〈私が厚労大臣だった頃を振り返ると、議員が経験を重ねて大臣になるので、与党の議員と内閣が利権で対立するようなことはあまりなかった。事前に自民党内の政務調査会で調整が済んでいるからである。 地方自治体の場合、首長が与党と調整するときは、与党の幹部(ドン)を通じて行うことになが、フィクサーの頭目のようなドンと対立すれば、政策遂行の邪魔をされることになる。〉 と書いた。その危機感は、韓国の混乱を見て、ますます募っている。 韓国で混乱が続いて、喜んでいるのは北朝鮮である。北朝鮮は、10月に南北に通じる道路の一部を破壊したが、そのおかげで、北朝鮮軍が38度線を超えて南進しないで済んでいる。 韓国が弱体化したときに、日本は自分の国を守り続けることができるのか。日本が韓国やアメリカと協力して、北朝鮮の侵略行為を阻止せねばならないことは言うまでもない。 ところが、韓国で反日的な政権が誕生すると、対北朝鮮融和的な政策に走り、それがまた日本で嫌韓派を増やすことになる。嫌韓派には、日本の安全保障に無知な者が多い。韓国の現状を憂慮する。
舛添 要一