話題の“脳混乱系”リズムゲーム『ポリリリリズム』 制作者・なまり&すなじろに聞く、ヒットのワケ
音ゲー界では「混フレ」と呼ばれるポリリズム 難易度の高さに猛者たちが盛り上がる
――どうしてここまで『ポリリリリズム』が盛り上がったんでしょう。音ゲーにポリリズムが組み合わされたのが新しかった? なまり:僕自身は音ゲーマーではないので、音ゲーの歴史などには明るくないのですが、あとから知った情報によると「混フレ(混合フレーズ)」と呼ばれるものが、まさにポリリズムなのだそうです。『太鼓の達人』の「ドンカマ2000」など、有名な曲もいくつかあると聞きました。音ゲーのなかでも難易度の高い曲はまれにポリリズムを採用しているらしく、人によっては『ポリリリリズム』をプレイしていると「あの曲を思い出す」なんて方もいらっしゃいましたね。 すなじろ:私も音ゲーに関しては「音楽をたしなむ身として、音ゲーの音楽も聴いておこう」と少しプレイしたことがあるぐらいで、高難易度曲にポリリズムを使った曲があるというくらいは知っていましたが、ここまで盛り上がるとは……。 なまり:このゲームがバズったことによって、ポリリズムに適応した“超人”音ゲーマー、コンポーザーたちが難しい曲を作る……なんてことがあるかもしれませんね。「なまりのせいで最近の曲は難しすぎる!」と僕に石を投げられないかが心配です(笑)。 ――盛り上がりに合わせて、アップデートも盛んにされていましたよね。印象に残っているアップデートはありますか? なまり:セーブ機能がなかったのは、プレイヤーにとって辛かったと思いますね。1小節3秒だとして、1ステージ目から200ステージ目までやるとしたら、毎回10分くらい簡単なリズムを経てから次のステージに挑戦しないといけないので。 それと、ちょうどバズったのがゴールデンウィーク中のことだったのですが、もうそこからはずっと『ポリリリリズム』のことばかり考えていましたね。連休中にモバイル版の公開を間に合わせなきゃ、と。それ以外でも要望を見ては実装し、また別の要望を見ては調整しての繰り返しでした……。 もともと、古くからの友人たちと出かける予定もあったのですが、大きなチャンスだと思ったので「ごめん! 今が大事なタイミングだから」とキャンセルしてしまったほどです(笑)。 ――今後はどのように『ポリリリリズム』をアップデートしていく予定ですか? なまり:今は、初心者用のステージや、もっと上級者用のステージなど幅の広いステージを追加したバージョンを開発していて、くわえてAndroid用とiOS用、できればSteam版も出せるようにしたいと思っています。なので、それに向けて“爆速”で開発を進めています。 ただ、シンプルな内容だけに拡張性のあるゲームではないと思うので、さらにニッチな「ポリメーター」や「ポリテンポ」、上級者向けに図形を消すモードなども実装できたらとは思っています。 すなじろ:じつは、私の方でも13以上にも対応した音を追加できたらもっとフレーズの幅が広がるのでは……と勝手に考えています。ただ、元のプロジェクトファイルを紛失してしまいまして……。もし音階を追加するなら、なるべく合わせつつ、別の音色を軸に全体を差し替えるという形ですかね。もしくは、ピアノ以外の音色に選択できても面白いかも。 なまり:ハイハットが鳴るなど初心者向けの補助機能があるといいなと思ってました。 ――それにしても、数日で作ったゲームが、ここまでのバズを生んだということはすごいことだと思います。なまりさんのように興味を持って、「ゲームを作ってみたい」「作りたい」と考えている人にアドバイスをいただけますか。 なまり:僕がゲーム開発において意識しているのは「さっさと完成させる」ことなんです。ゲームって他の創作活動にくらべて、ひとつの作品を作るのにかかる時間が長いんですよね。完璧を目指しすぎてしまうと、どんどん細かいところが気になってしまうと思います。かけた時間や労力に対してプレイ回数が見合わない、遊んでもらえないことも多々ありました。 そういうイヤなループに入るよりも、完成グセを付けた方がいい。どんどん作って出して、プレイヤーたちの反応や様子を見て、また作ってを繰り返した方が良いと思います。特に、インディーズの規模感だとそういったスタイルでの制作がやりやすいですから。 ――いつかインスパイア元のジェイコブ・コリアー氏に届いてほしいところです。 なまり:そうですね。ただでさえ、プロのピアニストの方が参戦して下さっていているだけでも驚きなんですが、もしもご本人に知ってもらえたら……喜び狂ってしまうかもしれないです(笑)。
小池直也