引退後は「顔を出す仕事もしません」…アンジュルム・川村文乃はなぜ「有能」のまま、アイドルを卒業するのか
まだ需要はあるのに…間もなく「完全引退」
現役で活動する女性アイドルは、「少なくとも8400人」とも言われる(2023年11月25日付東京新聞)。しかし、アイドル業界は解散・メンバー交代、新規加入などによる新陳代謝も激しく、仕事の減少でフェードアウトのように引退、となるケースも多い。 【写真】まじか!アイドルとは思えない…川村さんの見事な「包丁さばき」! その中で、ハロー!プロジェクト(以下:ハロプロ)内のアイドルグループ「アンジュルム」メンバーの、川村文乃(あやの)さんが、11月28日に行われるグループの「日本武道館」公演をもってグループを卒業。あわせて、自らの意思で芸能界からの引退を決断したという。 川村さんは2016年から研修生としてハロプロに所属し、翌年に「アンジュルム」に加入。その後、加入からたった2年でグループのサブリーダーに抜擢されている。直近ではレギュラー番組や映画出演 、さらに故郷・高知県だけでない各地の観光・PR特使も兼任しており、芸能界での需要はまだまだありそうだ。 しかし、川村さんはこれらの仕事にすべて区切りをつけ、引退後は「顔を出す仕事もしない 」という。 そんな川村さんは、SNS・ブログでこまめな使いこなし方や立ち回りが、よく「有能」と称される。一般的にアイドルのスキルといえば「歌・ダンス」「容姿(かわいい、キレイ、カッコイイなど)などが思い浮かぶが、川村さんの場合は、これに「情報発信能力」「プレゼン能力」などが加わるのだ。 「有能」と称される川村さんの仕事ぶりは、日々仕事に追われるビジネスパーソンの参考になることも多い。まずは、川村さんがグループ卒業・引退発表後の2024年9月24日に登壇した「高知家のお魚メニューフェア」記者会見の取材記録から、その仕事ぶりを検証してみよう。
マグロ解体と見事な“場回し”
高知県で獲れた魚を使ったメニューを、全国約350店の「高知家の魚応援の店」で提供するという「高知家のお魚メニューフェア」は、2025年1月31日 まで開催されている。 川村文乃さんは「高知県おさかなPR大使」「高知県観光特使」「水産庁「さかなの日」応援隊隊長」などを歴任した立場から、このフェアの記者会見でゲストとして登壇。高知県の魚をPRしつつ、40kgもある高知県産キハダマグロを解体した――。 こう書くと不思議に思われるかもしれないが、川村さんは2021年7月に、日本で9番目、女性としては初 (当時)の「1級マグロ解体師」資格を取得。自らのストロングポイント(強み)として、たびたび披露している。それにしても、巨大な包丁を駆使して行うマグロ解体作業は、アイドルが身につけるスキルとしては、あまりにも豪快過ぎる。 そして、マグロ解体の作業中でも、川村さんのアイドルとしてのコミュニケーション能力が、いかんなく発揮される。この日は引退発表後とあって各社報道陣が詰めかける中、随所で「はい、そろそろシャッターチャンス!」と誘導し、隅から隅まで目線を合わせていく。 また、マグロ解体で無言となる場面でも、事前に「この次は○○をします」といった目的・時間軸をしっかりと伝えるなど、報道陣相手の“場回し”が異様に巧い。 あらためて振り返ると、川村さんはアイドルである以上に、プレゼンテーションのスピーカーとして、普通に優秀だ。なお、筆者の隣で「アイドルの取材は経験がない。今日は代役で来た」と興味なさげだった某大手新聞社の記者が、途中から川村さんの話を夢中になって聞いていたのが印象的だった。 また、話す内容が堅苦しくなりがちな自治体関係者に寄り添い、「この魚は〇〇にして食べると美味しいですよね」と即座に言い換えてくれる。後述するが、実は川村さんと高知県庁(特に水産振興課)との関係は十数年も続いており、PR業務のやり取りも“阿吽の呼吸”とも言えるほどスムーズそのもの。こういった「クライアントとの関係構築能力」があるからこそ、数々の観光大使を務めることができたのだ。 発表会の終了後には、関係者の方が「(高知)県庁は川村さんに、どれだけお世話になってきたかわからない。別れは辛いですよ」とこぼしていた。「高知家の魚メニューフェア」記者会見は、興味のない人も引き付ける「プレゼン力」「コミュ力」「クライアントとの関係構築能力」を川村さんが発揮したこともあり、自治体イベントとしては異例の100本以上の 記事・SNSで紹介されている。