頼総統の国慶日演説 主軸は「団結」への訴え=専門家/台湾
(台北中央社)頼清徳(らいせいとく)総統は10日、就任後初の国慶日(国家の日)演説を行った。専門家は、演説は「団結」への訴えを主軸の一つにしていたとの見方を示した。 頼総統は演説の冒頭で、孫文らが君主制の清朝を倒して共和制の中華民国を樹立した113年前の辛亥革命や国共内戦下の1949年に離島・金門島の奪取を狙う人民解放軍を国軍が撃退した「古寧頭戦役」、人民解放軍が金門島に砲撃を行った58年の「金門砲戦」、反体制デモの主催者らが投獄された79年の「美麗島事件」などに言及し、先人が自由や民主主義を追い求め、中華民国を守ってきた歴史を振り返った。 中山大学中国・アジア太平洋地域研究所の郭育仁教授兼所長は、頼総統の国慶日演説の主軸の一つは「団結への訴え」だったと指摘。革命や古寧頭戦役、金門砲戦は野党・国民党陣営に語りかけるもので、美麗島事件は与党・民進党陣営に向けて語ったものだったとし、国民・民進両党共に自由・民主主義を追求してきたことを浮き彫りにしたとの見解を示した。 シンクタンク、遠景基金会の頼怡忠執行長(CEO)は、演説全体の中で最も重要なのは「団結精神」だと分析。演説ではエスニックグループや世代を超えた団結に言及し、辛亥革命にも触れつつ、「中華民国」に帰属意識を抱く人々の考え方にも配慮したとの見方を説明した。 郭氏は、頼総統が演説で「中華人民共和国に台湾を代表する権利はない」と発言したことにも着目し、「(代表)できない」とするのではなく、「権利はない」としたことは国際法上の権力に基づいたもので、中国が国連で国連総会第2758号決議を引用して「台湾を代表する」と主張していることを否定するものだと指摘した。 頼CEOは、頼総統の演説において中国を見つめる視点は世界の立場に立ったものであり、両岸(台湾と中国)関係のレベルだけに立つものではなかったとし、以前に比べてより多くの善意を示したと分析した。 台湾大学政治学科の陳世民副教授(准教授)は、頼総統が演説で「自分の国を中華民国と呼ぼうが、台湾と呼ぼうが、中華民国台湾と呼ぼうが、どれを好むにしてもわれわれには共通の信念が必要だ」と訴え、「中華民国頑張れ」と述べたことに触れ、一部の人々が支持する1912年を始まりとする中華民国の歴史観を頼総統が受け入れる姿勢を示したと指摘。また、頼総統は団結を強調し、台湾社会が政党を問わず団結して外部の脅威と挑戦に対応することを望む姿勢を強調したとの見方を示した。 (呉書緯、温貴香/編集:名切千絵)