部下に伝えても変わってくれない 原因は「話し方ではなく『聞き方』」プロが教える極意
たとえば何かコミュニケーションをとりたいとき、メールやLINEで伝えてくる部下に上司は「なぜ直接言ってこないんだ」と苛立つ。でも部下は「なぜそんなログが残らないコミュニケーションしなきゃいけないんだ」と思う。双方とも自分が正しいという価値観でいるが、相手がそうするのには必ず理由がある。自分の価値観を押しつけず、その理由をまずは「聞く」ことが大事だと西任さんは説く。 「注意したいのは『なんで』『どうして』という言葉で相手を責めないこと。『あなたが〇〇しないことにはどんな理由があるのか、聞かせてもらえないかな』と『尋ねる』心で聞く。心のあり方が何よりも大切です」 ■心で感じて受け取る 一方で「話す」ときの難しさもある。冒頭の女性は、「どの程度、自分のことを『開示』するかがいつも悩ましい」と話す。 「仕事の会話でも、自分の内面の気持ちやプライベートなことも少し話すことは、信頼関係を築く上でもいいのかなという気がしています」 西任さんも、コミュニケーションエラーにつながりがちな原因として、「気持ちを言わず、頭でしゃべってしまう」という点を指摘する。 「私たちが何か話をして、相手がそんなふうに受け取ってくれたのかとうれしくなるのは、相手が心で感じて受け取ってくれたときですよね。たとえば、ただ『何かそれいいですね』と言うよりも、『何だか今の、心に沁みます』『それってすごく響きました』『今のお話を聞けてすごくうれしいです』など、相手の話を聞いて湧いてきた自分の気持ち、感情の変化を伝えること。『自己開示』と言うと皆さん、自分の話をすることだと思うかもしれませんが、実は心を開くということなんです。その意味での開示を意識しながら、心を伝えることが大切です」 (編集部・小長光哲郎) ※AERA 2024年12月2日号より抜粋
小長光哲郎