円安が重荷に…「1人当たり名目GDP」G7で最下位。韓国にも再び抜かれる【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
日本の名目GDPはドル換算で大幅に縮小し、国際的な地位低下が顕著になっています。その一方で、国内では食料価格の高騰が続き、実質的な購買力を蝕んでいるようです。本稿では、景気の予告信号灯として「東京都区部消費者物価指数」を取り上げます。GDPの国際比較と国内の物価動向から、日本経済の現状について、エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきます。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
3年連続で食料価格が高騰
東京都区部消費者物価指数で「食料」の前年比が、24年まで5年連続「総合」と「生鮮食品除く総合」を上回る。 12月27日に東京都区部消費者物価指数・12月中旬速報値が発表され、東京都区部消費者物価指数で、消費者が毎日口にする「食料」の前年比が20年以降24年まで5年連続で、「総合」と「生鮮食品除く総合」を上回りました。また、1月24日には全国消費者物価指数でも。「食料」の前年比が20年以降24年まで5年連続で、「総合」と「生鮮食品除く総合」を上回る見込みです。 ただし、21年の東京都区部消費者物価指数の前年比は「総合」▲0.2%、「生鮮食品除く総合」▲0.2%、「食料」▲0.1%で、すべての項目がマイナス。「食料」のマイナス幅が小幅でした。 ロシアのウクライナ侵攻が始まった22年では、東京都区部消費者物価指数の前年比は「総合」+2.5%、「生鮮食品除く総合」+2.2%、「食料」+4.5%でした。23年では伸び率が高まり「総合」+3.2%、「生鮮食品除く総合」+3.0%、「食料」+7.9%になりました。24年は「総合」+2.3%、「生鮮食品除く総合」+2.1%、「食料」+4.2%でした。3年連続で「食料」が高騰しています。 「食料」のなかの「生鮮食品」前年比をみると、22年+9.4%、23年+7.2%、24年+6.9%と3年連続で「総合」、「生鮮食品除く総合」を上回りました。異常気象の影響で、かわるがわる何某かの食品が高騰するような状況です。 3年連続の高騰ともなると、天候要因は一時的な要因ではなく、構造的な要因になり、食料価格を押し上げていることになります。農業政策などを含めた物価対策が必要な状況になってきたように思われます。また、円安の影響や輸送コスト高止まりなど、その他の上昇要因の影響も大きい状況です。 直近の10月家計調査でエンゲル係数が27.9%まで上昇し、39年ぶりの高水準になりました。ここにも食料価格の継続的上昇が影響しています。