赤字経営続くローカル鉄道 JR指宿枕崎線の沿線地域 鉄道を生かしたまちづくりとは? 広島の事例も検証
鹿児島テレビ
利用客の減少が続くローカル鉄道について考えます。 まずはこちらをご覧ください。 JR九州が毎年、鉄道の路線ごとに収支を公表しているのですが、県内の路線を見ると、1日2000人未満の利用客となっている路線は、このように営業損益が赤字となっています。 中でも最も赤字幅が大きいこちら、指宿枕崎線の指宿から枕崎の区間では現在、鉄道をどうすべきか今後のあり方が検討されています。 赤字経営が続くローカル鉄道と沿線地域はどう向き合うべきか? 取材しました。 午前4時半… 轟木康陽記者 「おはようございます。きょうはよろしくお願いします」 指宿枕崎線を利用する生徒 「よろしくお願いします」 轟木記者 「朝早いですね。いつもこんな感じですか。」 生徒 「はい」 枕崎市の鹿児島水産高校1年の茂谷さんです。 毎朝、鹿児島市内の自宅から学校まで、JR指宿枕崎線を使って通学しています。 茂谷さん 「地元の友達や親を大事にしたいなと思っていて、ここから頑張って通学しようと思いました」 最寄り駅のJR坂之上駅に着いた茂谷さんは、午前5時6分発の列車で出発。 27の駅を2時間以上かけて通過する長旅です。 高校の最寄り駅、枕崎市のJR薩摩板敷駅に着く頃には、あたりはすっかり明るくなっていました。 茂谷さんのように多くの生徒が通学に利用しているJR指宿枕崎線。 鹿児島中央駅と南薩を結ぶルートの中で、今議論に上がっているのが指宿駅から枕崎駅を結ぶ区間です。 この区間の1キロあたりの1日の平均利用客数の推移は、2000年以降減少が続き、2023年度は222人。 JR九州が発足した1987年度と比較すると、約8割近く減少しました。 主な理由として、人口減少やマイカー利用の増加が考えられます。 赤字状態の収支が続く中、2024年1月、JR九州の古宮洋二社長はこの区間について次のように話しました。 JR九州・古宮洋二社長 「地元のとしては鉄道に対する色々な気持ちもあるだろうし、我々も経営上の問題点があるので、方向性を見出すには、ある程度時間がかかるのではないか」 JR九州や沿線自治体では現在、鉄道の存続や廃止を前提としてではなく、鉄道を生かした沿線地域の街づくりをどうすべきか、話し合いを始めました。 メンバーである交通政策の専門家は。 呉工業高等専門学校・神田佑亮教授 「赤字赤字と言うのはあくまで鉄道事業としての赤字であって、地域の経済と維持にかかるお金を天秤にかけたときに、地域の経済が鉄道の維持費より上回れば、鉄道が存在する意味はある」 鉄道が地域にもたらす価値とは一体何なのか。 取材班は広島県に向かいました。 広島北部にある人口約5万人の街、広島県三次市。 この街にはかつて島根県の江津まで伸びるJR三江線が走っていましたが、利用客の減少などを理由に、2018年3月に廃線となりました。 子供たち 「三江線ありがとう」 廃線から6年あまり。 沿線をたどると、主なき駅や線路がそのままの状態で残されていました。 三江線がなくなった後、代替バスを走らせるようになった三次市。 利用者からはこんな声が聞かれるそうです。 三次市 まちづくり交通課・呑谷巧課長 「バスだと結構家の近くの道路を走るので乗りやすい。田舎になるとフリー乗降といってバス停の間でも手を挙げたら乗れる。そういったところからすると、乗りやすくなったという声がある」 各沿線地域では、鉄道に変わるバスなどの代替輸送手段が確立されていました。 三江線の島根県側にあるこの町では、NPO法人が自家用車を使った送迎サービスを行っています。 「こんにちは」 「きょうはよろしくお願いします」 「よろしくお願いします」 NPO法人によりますと、利用者からは便利という声がある一方、108キロという距離を結んでいた鉄道がなくなったことについての課題も聞かれました。 NPO法人・はすみ振興会 スタッフ 「遠方や三次、広島、江津の方面にいくとなると、デマンド(代替交通)では対応しきれない」 「川沿いの風景と共に楽しめる線として、価値が有るなということを最近になってつくづく思う。今となっては遅いんだけどね」 三江線の沿線住民からはこんな声が聞かれました。 沿線地域の住民 「(廃止になって)過疎化が進んで家が廃屋になったり最近特に多くなっております」 「バスが走っているんです。三江線の代わりにね。それがいつまで続くのか不安はあります。僕らも歳ですから」 「車社会になっているので、困ったことはほぼないと思う。周りが騒ぎ立てるくらい『なくしちゃいけない』と『だったら乗れよ』と。『なくすな』以前に『あなたたち乗りなさいよ』と。そういう人たちに言いたかった」 JR指宿枕崎線の沿線地域では今、鉄道を生かした街づくりをどうすべきか議論が始まっています。 2024年10月には、沿線地域の高校生が集まりワークショップが開かれました。 参加した高校生 「沿線のいいところは海がきれいなことで、基本的に窓側に座る」 「猫カフェや猫駅長など動物を使った集客方法の案が出てきました」 「景色が良いところは、そこだけスピードを落として運行するなどの案が出ています」 毎朝、指宿枕崎線で学校に通う茂谷さんにもこんなことを聞いてみました。 Q.もしなくなったら悲しい? 「はい、結構悲しいです。西大山駅。JR最南端の駅からの景色とか海の景色とかが結構好きです」 利用者の減少がとまらないローカル鉄道。 赤字路線だとしても、それを必要としている人がいます。 鉄道を生かした地域作りがどこまでできるのか? JR指宿枕崎線の沿線地域は、今重要な分岐点にさしかかっています。
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