超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
新型ムラーノが発表! そもそもムラーノってどんなクルマ?
日産の北米部門が10月16日に世界初公開した新型ムラーノが話題です。同車は2025年初頭にアメリカとカナダでの発売が予定されており、いまのところ日本市場への導入は未定。そこで、今回は日本での発売を祈りつつ、カッコいいと評判のエクステリアデザインをあらためてチェックしてみたいと思います。 【画像】新型日産ムラーノのそのほかの画像を見る
●歴代は日産デザインの変遷に沿ったカタチ
2002年に北米から発売が始まった初代は、当時の経営不振を払拭するデザイン改革のなかでの船出となりました。当時は3代目マーチや2代目キューブ、ティーダやZ33型フェアレディZなど、じつに魅力的なモデルが輩出され、1980年代末に続く日産デザインの「第2のピーク」ともいえる状況だったのです。 ムラーノもその例に漏れず、どこかマーチのエッセンスも感じさせるスタイリングはユニークかつ先進的で、日本での発売時にはグッドデザイン賞を受賞しています。 2代目以降も、その時代の日産デザインに沿ったスタイリングが特徴でした。「第2のピーク」時に登場した多くの車種は、その後わかりやすいスタイリッシュ方向へ舵を切りましたが、2代目も同様。続く3代目は現在に続くVモーションを大幅に取り入れた造形でした。 となると、新型となる4代目は当然いま日産が展開する「タイムレス ジャパニーズ フューチャリング」なるデザインフィロソフィに沿ったスタイリングとなるワケです。
●静と動を組み合わせた新しい日産デザイン
で、新型のデザインコンセプトは「エネルギッシュ✕エレガント」。まずは初代から継承される「ムラーノらしさ」を探してみると、ボリューム感のあるフロントに滑らかなルーフラインをはじめとした流麗なボディシルエットが見て取れます。さらに、リヤへ向けてキックアップするベルトラインによる軽快なサイドグラフィックが「らしさ」を担保しているようです。 じゃあ新型の特徴は? というと、最初に目に入るのがボディサイド。リヤへ向けて緩やかに下るキャラクターラインと、その先の大きく張り出したリヤフェンダーの組み合わせです。前者の繊細なキャラクターラインは「エレガントさ」と同時に「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」特有の先鋭さももち合わせています。 一方、リヤフェンダーの張り出しはまさに「エネルギッシュ」そのものですが、最近の日産車ではこのエモーショナルな造形はなかなか珍しいかもしれません。もちろん、繊細なキャラクターラインとの「対比」も意図されたものでしょう。 エレガントさの表現としては、ルーフに沿ったシルバーの長いモールも大きな役割を持っています。巷ではフェアレディZと似ているなんて話があるようですが、同車が「刀」という強いイメージを打ち出していたのに対し、ムラーノではルーフラインを美しく飾る脇役に徹しているのが異なるところです。
●統一デザインのなかでモデルごとの個性を出すには?
さて、ひとつ心配なのはフロントを飾るご存じデジタルVモーションです。先に公開された新しいキックスもそうですが、ムラーノもこのグリルを最大限効果的に使った造形になっています。 その表情は極めて個性的であり、だからこそ新しい日産としての「顔」になっているのですが、あまりにインパクトがあるので、どの車種も似たような表情になってしまい、結果として個性を感じにくくなってしまう危険性を感じるのです。 日産にとってデジタルVモーションは「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」をより強く演出する大きな「発見」だったワケですが、その使い方には相応の工夫が必要なのかもしれません。
すぎもと たかよし