Jリーグは世界へ「もっとアピールできる」 海外記者が期待も…人気拡大を阻む欠陥点【インタビュー】
Jリーグの “インバウンド戦略”
目覚ましい進歩を続けてきた日本サッカー。さらなる発展を遂げるべく、Jリーグをはじめとした国内リーグは今後どのような道へ進み、何が必要とされるのか? 日本のサッカー事情に精通したアメリカ人スポーツジャーナリスト、ダン・オロウィッツ氏が、そのためのヒントを提言。今回は、Jリーグの人気拡大に向けた“インバウンド戦略”について語ってもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の1回目) 【写真】「海外なら4000円」外国人ファンも驚きのJリーグの衝撃スタグル ◇ ◇ ◇ 2006年末に日本に移住したオロウィッツ氏。翌年5月にスタジアムで体感した“応援文化”に魅了されJリーグの虜になった。11年から本格的にサッカーのライターとして活動を始めると、その後は日本の英字新聞「ジャパンタイムズ」記者として長く活躍。「サッカーを中心に日本のスポーツを世界へ」というモットーの下、フォトグラファーとしてのスキルも生かしたマルチメディアで、Jリーグに限らず日本代表やWEリーグとこの国のサッカーを幅広く海外へ届けてきた。 今年の春からはフリーランスのスポーツジャーナリストとして活動を開始。Jリーグクラブの海外向け情報発信にも携わるなど活躍の幅を広げるなかで次の思いを強くした。リーグもクラブも、もっと世界に魅力を伝えられるのではないか――。 「5年ほど前からJリーグはSNSを中心とした海外発信に力を入れるようになった印象がある」とオロウィッツ氏。この動きを「すごく評価できる」とする一方、「『これは一体何のため』と理解しづらく感じている部分もあるんです」と違和感も指摘。その正体をこう続ける。 「試合のハイライトやサポーターの様子を投稿するのもいいのですが、歴史をはじめとしたクラブにまつわる情報をきちんと伝えられているのかは気になりますね」 オロウィッツ氏がこれまで日本のサッカー情報を海外へ届けるなかで、こだわってきたのが“歴史”について。その重要性を感じる理由として、一例を挙げた。 「例えば、サンフレッチェ広島の歴史をさかのぼると、現地で競技普及の一助となったのは、第1次世界大戦時に似島(広島市南区)の捕虜収容所に送られたドイツ軍の守備隊兵士たちです。彼らの母国でさえ知られていない事実かもしれませんが、こうした歴史を知ることで、クラブがなぜ今のサッカースタイルになっているのかなどを理解しやすくなると思います」 さらに、紆余曲折の歴史も現在のJリーグを理解するうえで欠かせない情報だと考える。 「Jリーグの海外SNSはほぼポジティブなネタしか扱っていません。しかし、横浜フリューゲルスなどの“黒歴史”もリーグや各クラブの現在につながっているのは間違いなく、そういう事実に共感できる海外ファンも少なくないはずです」 歴史に代表されるクラブの背景を深く知るからこそ、チャントやゲートフラッグといった細部への理解にもつながり、「Jリーグを倍楽しめる」とオロウィッツ氏は語る。