大雨の特別警報 気象庁が基準を大幅見直し 2013年伊豆大島でも発表可能に
そもそも特別警報とは?
従来の指標のまま、エリア要件を狭めることはできなかったのか? もちろん、単純に小さいエリアでも発表するようにするだけならそれほど難しくないが、そうした時に予想されるのは大雨特別警報の発表頻度が上がることだ。もともと、大雨特別警報は2011年9月に紀伊半島で死者・行方不明者98人の大被害をもたらした台風12号の時に、警報発表後にもさらに大量の雨が降って危機が高まったのに伝える方法がなかった、という事態があったことなどを受けてつくられたものだ。 特別警報が出る前の段階で避難などの行動に移るのが基本だが、何らかの事情で対応できなかった人に対して、最後の一押しで「尋常ではない状態」を伝えるためのものなのに、何度も発表されるようなことになると、警報が軽視されるうえ、「特別警報慣れ」してしまう事態が生じかねないという懸念があった。 しかし、近年の災害発生事例を踏まえた時に、大雨特別警報の発表基準や指標を見直すべきではないか、という声は根強かった。気象庁は従前から特別警報について、「実際の発表状況や効果などについて検証しつつ、必要に応じて見直しを行っていく」としていたが、観測・予測技術の強化によって、より災害発生との結びつきを精度高く表現する「危険度分布」技術などの運用を始めたことで、エリアを狭めても、発表したのに大きな災害が起きない「空振り」が生じない形で大雨特別警報を発表できるめどが立ってきたことから、今回、短時間指標の改善に取り組むことにしたようだ。
新しい指標はどうなる?
それでは、気象庁は新しい大雨特別警報の発表基準をどのようにしようとしているのだろうか。キーとなるのは、土砂災害や洪水警報の「危険度分布」と呼ばれるメッシュ情報だ。危険度分布は、地図上で注意(黄色)→警戒(赤色)→非常に危険(薄紫)→極めて危険(濃い紫)と段階的に色が変わることで、危険度・切迫性の情報を「見える化」したもの。 新しい指標は、このうち「警戒」を意味する赤色の基準(警報基準)をはるかに上回ったところに新しいラインを設定する。これまでは「その地域で50年に1度」の値が基準値となっていたが、広島市の土砂災害のようなケースにも対応できるよう、新基準はこれにこだわらず、本当に危険な災害が発生する可能性が高いと考えられる値を地域に寄り添った形で設定する。さらに、これまで「5×6キロ四方」を1格子としていたが、これを「1キロ四方」を1格子としたうえで、新しいラインに達する格子が10格子ほど出現しそうだと予測した場合に、該当する市町村に発表するという案が有力となっている。 この案となると、これまでの30分の1の領域だけで特別警報を発表するかどうかを判断できる計算になる。また、洪水警報の危険度分布についてはこれまでも活用してきたが、さらに活用の割合を高めるという。洪水警報の危険度分布は、単純な降水量ではなく、降った雨が地表面や地中を通って川に集まり下流に流れるというプロセスも考慮した流域雨量指数を用いている。このため、これまで以上に洪水の危険性も踏まえた特別警報を発表できるようになることが期待できるという。 また、気象庁はこうした特別警報の基準の見直しとあわせて、特別警報の基準値に到達しそうなエリアも危険度分布で表示することも計画しているという。危険度分布と密接に結びついている注意報、警報に対して、危険度分布上の位置づけは明確ではなかった特別警報だが、この変更が実施されることによって注意報、警報と同様に一体的な運用が可能になりそうだ。