大雨の特別警報 気象庁が基準を大幅見直し 2013年伊豆大島でも発表可能に
「警報」の発表基準をはるかに超える数十年に一度の大災害が発生するおそれがある場合に発表される大雨の「特別警報」について、気象庁が、市町村単位で発生しているような局所的な現象に対しても発表が可能になるように短時間指標と呼ばれる発表基準の見直しを検討していることが分かった。見直しされれば、2013年8月の大雨特別警報の運用開始以来、最も大きな基準変更になる。 大雨特別警報は、2013年9月16日に第1号を京都府、福井県、滋賀県に発表。それから昨年の西日本豪雨までのおよそ5年間に気象等特別警報(台風を要因としたものも含む)は8事例10回にわたって発表されてきた。しかし、その一方で死者・行方不明者39人を出した伊豆大島土砂災害(2013年10月)、74人が死亡した広島土砂災害(2014年8月)の時のように、狭い範囲の豪雨では甚大な被害が出ても発表されないケースもあった。これは、大雨特別警報が「府県程度の広がりをもつ現象を対象に」しているためだが、被災自治体やメディアから「なぜ出さなかった」などと批判を浴びることも少なくなかった。 見直しを進めることによって、今後は、単一市町村でも発表できるようになる見込みだ。 同時に全国一律で「その地域で50年に1度の値」としていた基準値も見直すという。
なぜ、対象にならなかった?
なぜ、これまでこうした災害は特別警報の発表対象にならなかったのだろうか? 大雨特別警報の発表指標は、大きく分けて、長い時間降り続けた雨に対するものと、短い時間に集中的に降る雨に対するものの2つある。1つは長時間指標と呼ばれるもの。48時間降水量及び土壌雨量指数(降った雨がどのぐらい土壌の中にたまっているかを指数化したもの)が、50年に1度(地域ごとに見た場合)の値以上になったエリアが、5×6キロ四方を1格子とした時に50格子以上まとまって出現した時が指標となっており、昨年の西日本豪雨の時に発表された特別警報(愛媛、高知県は除く)がこれに当たる。 一方、今回、見直されることになった短時間指標は、3時間降水量及び土壌雨量指数が、50年に1度の値(あるいは150ミリ)以上になったエリアが、長時間指標と同じ1格子で10格子以上まとまって出現した時を指標としてきた。2017年7月の九州北部豪雨の時に福岡、大分県に発表された特別警報がこれに当たる。 こうした条件から分かるのは、長時間、短時間指標のいずれも、範囲の大小はあるが、「広い範囲での豪雨を対象」としているという点だ。このため、面積約90平方キロの伊豆大島では、3時間降水量が島全域で50年に1度の値になったとしても、10格子以上(300平方キロ相当)という大雨特別警報の発表の基準を満たさない。どんなに激しい現象だとしても、それが局所的であれば、大雨特別警報は発表されないという仕組みだった。 また、これとは別に、広島市の土砂災害の場合を考えると、従来の「50年に1度」という基準よりもずっと短い間隔で大きな災害が発生しているということが懸案の一つになっていたという。50年に1度の値に達しないと大雨特別警報は発表できない仕組みだが、それよりも少ない値であっても大きな災害が発生してしまうという状況に対し、これまでは大雨特別警報は対応できなかった。