<熊本地震>影響があったニュースは? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
14日夜発生の熊本地震はいまだ余震が続いており、避難している人も大勢います。日本で初めての「2度の震度7」を記録し、大きな被害が出ているので、14日から先週末にかけてメディアは地震報道一色になった印象です。それ自体はニュースバリューとしても人道上も当然です。ネットと異なり、テレビや新聞の報道には時間や紙幅の限界があるため、地震に限らず、大きなニュースがあると、仮に「なかった場合」だと一層大きく取り上げられていたかもしれない話題があるものです。その他の大事なニュースとの関連について、あらためて検証してみました。
■TPPの国会審議
TPPは加盟国の署名(調印)まで進み、後は各国の批准(国内手続きの完了)によって発効(効力を持つ)します。TPPのケースでは国内総生産(GDP)の大きな国と多くの加盟国がいずれも批准しなければ発効しません。強い影響を与えるGDP大国と、小国とはいえ多くの賛同の両立をはかっています。 域内で日本はアメリカに次ぐGDP2位なので批准は発効に欠かせません。衆議院で審議入りしたのは4月5日。6月1日の会期末(延長がないと仮定)を考えると大型連休前に衆議院を通すというのが政府・与党が描いた当初のスケジュールでした。ところが政府がTPP特別委員会に示した交渉過程の資料が「守秘義務」をたてに全部黒塗りにした半面で、西川公也TPP委員会委員長が内幕本の出版を計画しており「こちらの方が守秘義務違反ではないか」と追及され委員会が中断したりとゴタゴタが続きました。審議再開のメドとされていた14日に熊本地震が発生します。 政府は地震の対応に追われたのもあって今の通常国会で成立させるのを断念しました。 ただあきらめたのは地震の影響だけなのかというと疑問もあります。 そもそも交渉を担った甘利明TPP担当大臣が今国会中に金銭授受疑惑で辞任。外務省の首席交渉官も大使へ転出と事情を深く知る者が退場していました。昨年の臨時国会で審議する方法もあったのに安倍首相は召集していません。西川氏も自民党の対策委員会委員長や農林水産大臣に就任し交渉の一端を知る立場であったとはいえ、金銭スキャンダルで農水相を辞任した過去があり、国会の委員長として疑問符が付く人事であったとみる向きもあります。 また地震の前から、与党内では今国会の成立に消極的な声も少なからずありました。地震を奇貨としての先送りであれば批判されそうです。