<熊本地震>影響があったニュースは? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
■パナマ文書
日本で一斉報道されたのが4月6日。中米にあるパナマという国の法律事務所から流出した契約文書など実に1150万点もの内部資料です。入手したアメリカのNPO「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」を中心に分析して発表しています。2010年の「ウィキリークス」や13年のスノーデン告発を上回る少なくとも量的には史上最大のリークといっても過言ではない大事件です。 パナマは「タックスヘイブン」(租税回避地)の一つです。強い産業を持たない小国がお金持ちや国際的に展開している大企業の資本を呼び込むために法人税(企業のもうけにかかる)などをゼロにしたり非常に小さくしている地域を呼びます。自国の課税を逃れるためにペーパーカンパニーを作って財産を移すのです。この行為自体は合法なのですが、富める者が税金を本来払うべきところに払っていないのは倫理上の問題があるとかねがね指摘されていました。例えば日本で日本人相手にもうけた場合、整備されたインフラ(道路、電気、上下水道など)の恩恵を受けています。その整備は原則として税金です。 まして政治家ともなると私腹を肥やしているとの批判は免れません。すでにアイスランドの首相が抗議デモなど国民の猛反発にあって辞任、他にもロシアのプーチン大統領の友人や、中国の習近平国家主席の義理の兄、イギリスのキャメロン首相の亡父などの名が挙がっています。「反腐敗」を看板にしてきた習主席にとって場合によっては言行不一致となりかねず情報統制にやっきとなっています。キャメロン首相も崖っぷちです。 こうした報道は熊本地震で相対的に小さくなったといえます。もっとも、追及はこれからが本番です。日本人および日本企業も約400の記載があるとされ明らかになれば大揺れに揺れる可能性も残っています。まさに地震報道一色だった時に開催されたG20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)でも、課税逃れの対策を盛り込んだ共同声明を発表しています。5月末に日本で開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも話題に上るかもしれません。