<アフリカ利権を失い焦るプーチン>アサド政権崩壊でシリア反体制派へ手のひら返しするロシア
アフリカ権益の拠点
さらに重要なのは、同航空基地はアサド政権軍を支援するだけでなく、ロシアが経済、外交関係を強化するアフリカ諸国に私兵集団「ワグネル」や、ワグネルが解散した後の受け皿となったロシア軍の部隊を派遣するための拠点となっていた点だ。 ロシア国外を拠点とする独立系メディア「メドゥーザ」によれば、これらの部隊を乗せた輸送機は、ロシアからカスピ海上空などを飛行した後にフメイミム航空基地で燃料などを補給して、各国に向かっていた。現状、同地域でロシア軍がこのような目的で利用できる基地は存在しないとされる。 ロシアにとり、アフリカとの関係は極めて重要だ。ロシアがウクライナに侵攻した際に、国連での度重なるロシアに対する非難決議に反対、または棄権したのは、ロシアがワグネルの派遣などを通じて政権の維持を支援するアフリカ諸国だった。ロシアは政情が不安定な一部のアフリカの国々を軍事的に支援することで、これらの国々が国連のような場でロシア寄りの姿勢を示すよう仕向けている。 アフリカ諸国との関係は、ロシアを経済的にも利している。例えばスーダンでは、ロシアから軍事、政治支援を受けることと引き換えに、軍が自国内の金鉱山の開発利権をロシア側に付与していた実態が判明している。 このような動きは特に、14年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合後に活発化しており、国際的な対露経済制裁が強まるなか、ロシアがアフリカ諸国との連携に活路を見出していたことが浮かび上がっている。これらの国々はさらに、ロシア製武器の重要な市場ともなっている。
シリア国内のロシア軍兵力は数分の1に減少か
アサド政権があっけなく崩壊した背景には、同政権を支援していたロシアがウクライナ侵攻で兵力分散を余儀なくされ、さらに同じくアサド政権を支えていた親イラン民兵組織ヒズボラが、イスラエルとの戦闘で疲弊していたことがある。 ロシア軍は一時、数万人規模の兵力をシリア国内で展開していたとされるが、24年秋の段階でその規模は約7500人程度にまで減っていたようだ。同様に、武器などの軍事物資が持ち出されていたとみられる。ロシア軍は、シリアのアサド大統領が逃亡する直前までフメイミム航空基地から出撃して反体制派勢力への空爆などを行っていたとされるが、彼らの猛攻からアサド政権を守るだけの力は残していなかった。