直木賞・青山文平氏「“銀色のアジ”のような小説を書きたい」
第154回芥川賞・直木賞が19日夜、発表され、芥川賞は滝口悠生氏の「死んでいない者」と本谷有希子氏の「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」、直木賞は青山文平氏の「つまをめとらば」が受賞した。その後、都内のホテルで各氏が受賞の喜びを語った。 【中継録画】第154回 芥川賞・直木賞 受賞者3人が会見
「銀」は生きているからこそ出る色
2回目のノミネートで受賞した青山氏。直木賞という賞については、「全国の書店に小説を並べることができる賞は、直木賞だけ。書き手にとってこれほどかけがえのない賞はありません」と率直に語った。 67歳。史上2番目の高齢での受賞だが、「スポーツ選手と同じく、小説家も今よりも良いものを書きたいと思う気持ちがなければ続けられない。書いている限り、年齢は関係なく、もっと良いものが書きたい」と意気込みを見せた。 書きたいのは、“銀色のアジ”のような小説。意味は二つあるという。「まず、織田信長のような有名人ではなく、アジのような大衆魚の話が書きたい」として、歴史上の英雄よりも、市井の人々を描く小説を志向する。さらに、「日常の中でも、時代小説で問われるスケール感やダイナミックさはあると思う」と述べた。 「また、アジは青魚と言われるが、水族館で泳いでいるアジは銀色をしている。青は死んだ色なんですね。生きているからこそ出る色、“銀色のアジ”の物語が書きたい」として、みずみずしい生命感のある小説の創作に意欲を示した。 舞台としては、18世紀後半から19世紀前半の江戸時代を好んで選ぶ。「江戸時代の中でも一番成熟していて、人々にとってお手本のない時代なんです。自分で考えざるを得ないので、個々人が出てくるわけです。だから、この時代を描いています」。 (文・写真:具志堅浩二)