駐車場で倒れたスタッフ バレー×ラグビーの「連係プレー」で命救う
「ホンダヒート様のご観戦に来られていた看護師様へ届け!」――。バレーボール男子・ヴィアティン三重の椎葉誠常務取締役が5日夜、X(ツイッター)にこんな投稿をした。試合を前にヴィアティンの男性スタッフが突然倒れ、近くのスタジアムへラグビー観戦に来ていた女性看護師らのおかげで一命を取り留めた。投稿はそのお礼と報告だった。 投稿や椎葉さんの話によると、Vリーグ・ヴィアティンの試合は5日に三重交通Gスポーツの杜鈴鹿(三重県鈴鹿市)であった。スタッフは駐車場を整理している時に倒れ、一時心停止の状態になった。現場にいた椎葉さんやスタッフ数人が救急車を呼んだり、自動体外式除細動器(AED)や担架を探したりするなど対応に追われた。 ヴィアティンのトレーナーが心臓マッサージを施したが、下がアスファルトのため強く押すことがためらわれた。その時、一人の女性が近付いてきた。同じスポーツの杜鈴鹿のスタジアムで試合があるラグビー・三重ホンダヒートのグッズを身につけており「看護師です」と名乗った。そして「もっと力を入れて」などと正しい心臓マッサージの方法をアドバイス。「プロ」の指導でトレーナーは遠慮なく全体重をかけた。 男性スタッフは救急搬送され、心筋梗塞(こうそく)と診断された。当面は入院するが、生命の危機は脱した様子だという。 Xの投稿はその夜のもの。椎葉さんは看護師に向け「ご尽力のお陰で一命を取り留めることができました。無事の一報が届けばと思います」と報告した。ヒート側もXで応えた。「搬送された方がご無事で何よりです。今回看護にあたった方が弊部スタッフの関係者だったため、一命を取り止めた事を先ほど伝える事ができました! 心配していたので安心したとのことです」 翌6日、椎葉さんは改めてヒート側に連絡し、看護師がヒートのスタッフの妻だったことを知った。バレーボールとラグビー。競技の枠を超えた「連係プレー」に感謝し、Xに「選手はもちろん観客の皆様、スタッフに不測の事態が起きた際、1分1秒が命の分かれ道になるという事を強く感じました」と再びつづった。 スポーツの現場では悲しい事故が起きている。2011年、サッカー元日本代表DF松田直樹選手が所属していた日本フットボールリーグ(JFL)・松本山雅(現J3)の練習中に急性心筋梗塞で倒れ、その後亡くなった。練習場にAEDがなく処置の遅れが指摘されたことから、AEDが普及する一つのきっかけにもなった。 ヴィアティンでは試合の度にAEDの場所や避難経路を確認。悲劇を繰り返さないため日ごろから地道に取り組んでいるという。椎葉さんは「スポーツの現場では、誰一人犠牲になってはいけないんです」と話している。【村社拓信】